■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の6月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

伴侶動物を対象とした動物看護師の資質向上と業務の適正化を図るため、2016年6月に愛玩動物看護師法が成立し、近い将来国家資格としての動物看護師が誕生することになりました。したがって、今後は動物看護師の業務もより責任のある高度な専門知識を必要とするものになり、今回のテーマでもある院内感染対策も重要な業務となることが考えられます。しかし、現状では大学や専門学校での動物看護学教育において、この分野に関する知識や技術が十分に伝授されていないことも事実です。そこで今回は、小動物病院の院内感染対策を推進するに当たっての、動物看護師が理解しておかねければならない基礎知識について紹介したいと思います。

小動物病院に来院する多くの動物は疾病に罹患したものであることを考えれば、来院した動物の血液、体液・分泌物・排泄物、健常でない皮膚、粘膜などは全て感染性のあるものとして対応することが必要です。これは来院する動物のみならず獣医療従事者の双方における院内感染の危険性を減少させる対策として極めて重要と考えられます。標準予防策(standard precaution)は感染の連鎖を遮断することであり、具体的な実践には、手指衛生、個人防護具の使用、医療用器具・機器の取り扱いなどが挙げられます。