2019 年に、免疫介在性溶血性貧血(immune-mediated hemolytic anemia:IMHA)の診断・治療に関するコンセンサスステートメントがアメリカ獣医内科学会(American college of veterinary internal medicine:ACVIM)より発表された。IMHAは赤血球に対し自己抗体が産生されることで発症する代表的な免疫介在性疾患であり、特に犬では溶血性貧血の原因として一般的であること、貧血以外の合併症も多く致死率が高いことから、その診断・治療の理解は重要である。

コンセンサスステートメントは、診断編と治療編の 2 部構成となっている。
・ACVIM consensus statement on the diagnosis of immune-mediated hemolytic anemia in dogs and cats.
・ACVIM consensus statement on the treatment of immune-mediated hemolytic anemia in dogs.

診断編は犬と猫に関する記述であるが、治療編は犬のIMHAに限定されている。猫のIMHAの発生率は犬に比べ低く治療に関する情報が少ないこと、また病気の特徴も異なることから、犬の治療編の内容を単純に猫に外挿することはできない点には注意が必要である。

連載第 9 回目は、免疫抑制療法に関連した副作用のモニタリングについて解説する。

シクロスポリン

シクロスポリンが投与されている犬は、消化器に関連する副作用や歯肉の増生に注意しモニタリングすることを推奨する。頻度は低いが、犬では肝毒性の報告もあるため、関連する生化学検査項目を 2~3 カ月ごとに評価するべきである。

推奨レベル:強い

根拠:犬におけるシクロスポリンの副作用は消化器症状(嘔吐、下痢、食欲不振、嘔気)が多く、その他は一般的ではない。冷凍した薬剤を投与すること、またはフードと共に投与することによって消化器に関する副作用を軽減することができるが、フードによって薬剤吸収が変化してしまう恐れがある(注1)。まれではあるが、シクロスポリンによる肝毒性も報告されており、用量依存性ではなく特異体質によるものであると考えられる。他にも多毛症や歯肉の過形成も散発的に報告されている。ヒトでは腎毒性が問題となることがあるが、犬の場合、標準的なシクロスポリンの投与量では臨床的に問題となった例は報告されていない。

免疫抑制剤としてシクロスポリンが優れている点は、骨髄抑制が起こらない点である。しかしながら、日和見感染や無症候性細菌尿に対する易感染性は報告されており、特にグルココルチコイドや他の免疫抑制剤と併用している場合には注意が必要である。シクロスポリンは肝臓のチトクロームP-450 によって代謝されるため、P-450 の酵素活性を阻害する薬剤との併用はシクロスポリンの過剰投与につながる可能性がある。この機序を逆に利用し、シクロスポリンの投与量を減少させる目的でケトコナゾールが併用されてきたが、その反応は個々の患者で異なる。シクロスポリンの経口投与によって血小板活性化に関わる指標が上昇することが実験レベルで知られており、凝固亢進、血栓塞栓症が患者の予後を左右するIMHA罹患犬への影響が危惧されている。しかし、シクロスポリンによる血小板活性化について、臨床的にどれほどの意味があるのかはいまだ分かっていない。

注1:犬の場合、シクロスポリンは食間投与が推奨されている。