JVARMの存在意義

JVARM開始当初から日本の家畜由来耐性菌の現状を世界に発信しようと、担当者がそれぞれの対象菌種について、英語論文で公表することを責務としてきました。また、複数年度ごとに区切った英文報告書を作成し、動薬検のwebサイトから世界に発信しています¹⁾。2014年にWHOが公表した薬剤耐性のサーベイランス報告書にも代表的な薬剤耐性菌モニタリング制度として取り上げられています。JVARMを開始し継続する意義としてはいくつかあると思います。まず、1999年以前は一部の偏狭的な医学関係者から、医療で問題となる薬剤耐性菌の由来は動物であるということを真しやかに主張されましたが、全てが動物由来ではないだろうと思いつつ、科学的な裏付けデータがないために随分と悔しい思いもしてきました。

しかし、JVARMにより科学的なデータが積み重ねられてきた結果、薬剤耐性菌の動向が明らかとなり科学的に反論もできるようになりました。今では薬剤耐性菌の医療や動物での実態が明らかにされてきており、農林水産省の薬剤耐性菌対策も医療サイドから一定の評価を頂けるようになりました。さらに2017年度から開始された伴侶動物由来薬剤耐性菌の調査体制は世界をリードするものであり、名実ともに世界最強の薬剤耐性モニタリング体制を構築することができました。今年で23年を経過しましたが、薬剤耐性菌問題の重要性は益々高まっており、JVARMの存在意義も増しています。これら歴史を基礎としてJVARMがさらに発展することを願って止みません。



1)農林水産省動物医薬品検査所:薬剤耐性菌のモニタリング
  https://www.maff.go.jp/nval/yakuzai/yakuzai_p3.html
2)田村 豊:JVARMの設立背景と意義.動物用抗菌剤研究会報 41:14-21, 2019.
3)木島まゆみ:愛玩(伴侶)動物における薬剤耐性モニタリング.日獣会誌 70:412-416,2017.
4)国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議:薬剤耐性(AMR)アクションプラン(2016-2020).2016年4月5日 yakuzai_honbun.pdf (kantei.go.jp)


田村 豊 Yutaka Tamura

酪農学園大学名誉教授

1974年 酪農学園大学酪農学部獣医学科卒業
1974年 農林水産省動物医薬品検査所入所
1999年 動物分野の薬剤耐性モニタリング体制(JVARM)の設立
2000年 検査第二部長
2004年 酪農学園大学獣医学部獣医公衆衛生学教室教授
2020年 定年退職(名誉教授)

こちらの記事もおすすめ