2019年、米国獣医内科学会(ACVIM)により犬の粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の新たなガイドラインが策定された※1

犬のMMVDは、最も頻繁に認められる心疾患であり、無徴候期間が長く、生涯にわたり無治療で経過する症例も存在すれば、うっ血性心不全や死亡に至る症例も存在する。

これらの臨床ステージの重症度の評価法や治療法は日進月歩であり、2009 年に本疾患について初めてのガイドラインがACVIMから報告されて以降※2、多くの臨床研究が実施されてきた。

本連載記事では、12 回にわたって、2019 年にACVIMより報告された「犬のMMVDの診断・治療ガイドライン(2019 ACVIM コンセンサスステートメント)」を要約して掲載するとともに、重要と思われるポイントに解説を加えていく。

第 1 回である今回は、本ガイドラインの要約とガイドライン上の各推奨項目の推奨度の強さである「推奨クラス」、根拠となるエビデンスの強さである「エビデンスレベル」の定義について記載する。

本ガイドラインの要約

この報告は、ACVIM循環器専門医のコンセンサス委員によって発行され、2009 年に発表された犬のMMVD(または心内膜症、変性性または慢性弁膜症として知られる)の診断および治療に関するガイドラインを改訂するものである。

本ガイドラインでは、診断、内科的治療、外科的治療、食事療法の推奨項目が更新された。これらの項目がどれだけ強く推奨されるかは、診断および治療法の決定を裏付けるエビデンスの量と質、その両方に基づいている。心不全の臨床徴候が現れる前のMMVDの管理は、2009 年のガイドラインと比較して大幅に変更されており、また、進行した心不全と肺高血圧症の診断と治療の新たな戦略が総括されている。