「ダニに咬まれていない」「ネコに咬まれてない、引っ掛かれていない」獣医師・動物看護師への感染事例

2018年8月15日に体調が悪いネコが入院しました(下図)。1歳のメス猫で黄疸、食欲不振、嘔吐を示し、体温は40.4℃でした。血液検査では白血球と血小板が減少し、総ビルルビン値が上昇しており、血清材料からSFTSV遺伝子がPCR法で検出されました。しかし、入院後3日目に死亡しました。入院期間中に対応したのは、グローブと手術用マスクを装着した獣医師と動物看護師でした(ゴーグルはしませんでした)。ネコが死亡して10日後に、獣医師は高熱、疲労感、筋肉痛、眼痛と白血球と血小板の減少により入院しました。入院2日目と3日目の血清検体からSFTSV遺伝子が検出されました。入院後10日目に症状は無くなり退院しました。退院して5日後(9月11日)に血清検体からSFTSVの特異抗体が検出されました。

また、獣医師がネコを治療した時に補助した動物看護師も、12日後の8月28日に発熱と不快感を訴え、県内医療機関を受診しました。この時、臨床所見からSFTSの可能性は低いと判断され、通院治療にて間もなく回復しました。しかし、獣医師の件を踏まえ、血清検体のSFTSV遺伝子を調べたところ陽性でした。動物看護師の血清を用いた抗体検査を実施したところ、SFTSVの特異抗体が陽性でした(9月11日)。ネコと獣医師と動物看護師の血清検体をベロ細胞に接種してウイルス分離を試みたところ、3日目にすべての血清で細胞変性効果が認められました。分離ウイルスについて全ゲノム解析を実施したところ、3株とも100%相同性を示しました。


ネコからヒトへの感染経路で考えられるのは、まずはネコが保有するダニに咬まれることです。また、エアロゾルを介した感染やネコの血液や体液を介した感染も考えられます。

今回の事例でネコからヒトに直接的に感染したとする根拠は、まず分離ウイルスの遺伝子が100%一致したこと、ダニに咬まれていないこと、ネコに咬まれたり引っ掛かれたりしていないことを挙げています。なお、今回SFTSを発症したネコは皮下点滴の際に出血し、獣医師と動物看護師が血液のふき取りと止血処置を行ったそうで、ネコの血液を介した感染が考えられています。

今回の獣医師と動物看護師は治療を行う際に、感染予防対策としてグローブと手術用マスクを着用するなど、ある程度の防護具を身に着けていました。それにもかかわらず感染したことになるわけで、SFTSの感染予防対策の難しさを示しています。

SFTS汚染地域の獣医師や動物看護師は疑わしい症例に遭遇した場合、完全なる院内感染防止対策をとることが必要であることを、今回の事例は示しています。
なお、さらにSFTSの情報が必要な場合は、厚生労働省のホームページに掲載されている「SFTSに関するQ&A」が役に立ちます。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html