獣医師の普及・啓発活動の役割

以上のことから、2016年度から様々な媒体を利用して国民に向けて重点的に取り組んできた普及・啓発活動ですが、その効果は限定的といえそうです。特に抗菌薬がウイルスに効き、かぜに対して有効であると考えている方が未だ多く存在し、昨年の調査成績と変わらないことが残念に思われます。それも若年層に理解不足が多いことは、今後の普及・啓発活動の方向を示す結果とも思われます。なお、酪農学園大学附属とわの森三愛高校の生徒が2019年度に実施した全校生徒や親と教員に対するアンケート結果とも極めて近似しています(図4)


▼図4.とわの森三愛高校生による抗菌薬の適正使用アンケート結果


したがって、高等教育はもちろんのこと、初等・中等教育においても抗菌薬や薬剤耐性菌に関する正しい理解を得るようなカリキュラムを必要としているようです。獣医師は医師と並んでこの分野の専門家である訳ですので、日頃の臨床現場においても飼い主に対してできる限り動物のみならず人間における抗菌薬の適正使用など正しい知識を普及・啓発する役割があると考えます。



1)Tsuzuki S, Matsunaga N, Yahara K, Gu Y, Hayakawa K, Hirabayashi A, et al. National trend of blood-stream infection attributable deaths caused by Staphylococcus aureus and Escherichia coli in Japan. J Infect Chemother. 2020;26(4):367-71.
2)AMR臨床リファレンスセンター(国立国際医療研究センター病院):抗菌薬意識調査レポート2021  http://amr.ncgm.go.jp/pdf/20211004_report.pdf


田村 豊 Yutaka Tamura

酪農学園大学名誉教授

1974年 酪農学園大学酪農学部獣医学科卒業
1974年 農林水産省動物医薬品検査所入所
1999年 動物分野の薬剤耐性モニタリング体制(JVARM)の設立
2000年 検査第二部長
2004年 酪農学園大学獣医学部獣医公衆衛生学教室教授
2020年 定年退職(名誉教授)

こちらの記事もおすすめ