調査内容と結果

調査は2021年8月に実施し、全国の10代から60歳以上の男女700名を対象にしました。調査方法はインターネットに答えるという方法でした。まず、抗菌薬・抗生物質の知識についての質問です。「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがあるか」を訊ねたところ、84.7%の方が聞いたことがあると答えました。聞いたことがないと答えた方が15.3%で、最も多かったのが 20 代(25.2%)と気になるものでした。義務教育で必ず触れている言葉の筈ですし、若者で人気の漫画である「JIN-仁-」でもペニシリン製造が取り上げられているにも関わらず記憶にないことに驚かされます。

次に「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある」と答えた方に「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつけるか」と聞いたところ、あてはまらないと正解を答えた方は18.0%で、あてはまると不正解の方が59.4%もいました(図1)


▼図1.抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつけるか?


これは2020年の調査成績とほぼ同じでした。言葉は知っているものの、正確な作用までは理解していないということのようです。さらに先の質問と関連しますが、「抗菌薬・抗生物質という言葉を聞いたことがある」と答えた方に「抗菌薬・抗生物質はかぜに効くか」を訊ねたところ、あてはまらないと正解をした方が24.5%で、あてはまると不正解であった方が46.4%でした(図2)


▼図2.抗菌薬・抗生物質はかぜに効くか?


かぜの原因のほとんどがインフルエンザウイルスなどのウイルスということを知らないのか、または先の質問のように抗菌薬・抗生物質の作用を知らないかです。年代別にみると、 40〜60代では30%前後が正解しているものの、10〜30代では10〜20%程度に低くとどまりました。これも2020年の調査成績と同じ傾向でした。それ以外では、「抗菌薬・抗生物質は治ったら早くやめる方がよい」は間違いと正しく回答した人は29.5%であり、「抗菌薬・抗生物質を飲むと下痢などの副作用がしばしばおきる」と正しく回答した人は 38.8%でした。これら2問には正しく回答した割合が高く、正しい知識が身についてきている可能性があります。


次に抗菌薬の飲み方を質問しました。「家にとってある抗菌薬・抗生物質がある」との回答は17.9%で、 「とっておいた抗菌薬・抗生物質を飲んだことがある」との回答は16.5%でした。これらの抗菌薬・抗生物質の正しい知識は、先と同様に若年層でやや低い傾向がありました。自己判断で要指示医薬品である抗菌薬を勝手に飲んでいるということで、今後も正しい知識を普及・啓発しなければならいことを示しています。

さらに薬剤耐性について質問しました。「薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがあるか」を訊ねたところ、あると答えた方が36.9%で、ないと答えた方が63.1%でした(図3)


▼図3.薬剤耐性・薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがあるか?


また、「薬剤耐性を避けるために必要な時でもできるだけ抗菌薬を避ける」は間違いと正しく回答した人は40.5%で、不正解と「わからない」と回答した人を合わせると59.5%でした。

さらに「薬剤耐性の感染症」について怖いと回答した人は94.2%で、約8割が自分や身近な人が近い将来感染するか、するかもしれないと回答しました。 薬剤耐性に対して特に何もしないと回答した人は60.5%でした。