2021 年 7 月 3 日、静岡県熱海市の伊豆山地区において大規模な土石流災害が発生し、発生当初から自衛官、消防官、警察官ら約 1,000 名が行方不明者の捜索活動を続けてきました。この捜索活動に、特定非営利活動(NPO)法人日本捜索救助犬協会(江口タミ子代表理事、埼玉県久喜市)の災害救助犬も参加しました。

当協会の災害救助犬が熱海土石流災害の捜索活動に参加したのは、7 月 12、14、23 日です(7 月 25 日現在)。中でも7 月 14 日の活動には顧問獣医師の私(小沼 守:大相模動物クリニック/千葉科学大学)が帯同したため、本稿では獣医療支援者としての活動の意義を含め、14 日の活動を中心に報告します。

活動報告

救助犬とスタッフは14 日の捜索活動に備え、前日に現場近隣へ移動。14 日は朝 5 時集合でミーティングを実施した後、災害現場に移動し、朝 7 時ごろから消防隊の指示のもとで捜索活動を開始しました。

災害救助犬はその鋭敏な嗅覚を用いて、土砂に埋もれた家屋、倒壊した建物の瓦礫などの中に要救助者がいないかどうかを探す重要な役目を担っています。当協会の捜索活動においては、より正確性を期すために、1 頭だけが行方不明者のにおいを感知したとしても複数の犬で確認作業を行うようにしています。複数犬で確認ができた場合にのみ、人海戦術で丁寧に瓦礫などを撤去し、行方不明者の救出を試みます。

14 日の現場には土砂がまだ 2 メートル近くも堆積しており、雨で足元がぬかるんでいました。極めて足場の悪い状況
も影響してか、3 頭の災害救助犬が 3 ~ 4 時間かけて捜索しましたが、残念ながら行方不明者は発見できませんでした(7月25 日現在まで 6 名の行方不明者が発見されていません)。

捜索終了後は雨が降る中、ぬかるんだ現場の捜索で泥まみれになった救助犬を避難所まで歩いて連れて行きました。救
助犬たちは避難所で水洗いされた後、獣医療従事者による身体検査を受け、外傷などが見つかった場合は洗浄、処置が行われました。現場ではこのような形で獣医師や動物看護師も災害救助犬のヘルパーとして動いており、捜索活動を支える重要な役目を担っています。

こうした災害救助犬の活動には国、市町村から支援が一切ありません。救助犬を育てる育成費、現場に行くための移動費、現場で無駄なく動くための装備費のすべてを寄付金や自己資金で対応するしかない状況にあり、活動が制限されてしまう場合もあります。実は今回の熱海土石流災害の捜索活動でも、費用面の課題で 1 ~ 2 回、活動が制限されてしまいました。

いつ起こるか分からない大災害。災害救助犬の活動を継続し、1 人でも多くの方の命を助けるには皆様のご支援が必要です。当協会のHPやFacebook に支援方法の詳細を掲載しておりますので、活動にご興味をもって頂いた方はぜひご覧下さい。

HP
https://www.japan-srda.net/
Facebook
https://www.facebook.com/jsrda/


捜索場所の確認と段取り打ち合わせ


家屋倒壊現場を捜索する救助犬


救助活動後、避難所で泥を洗い落とした


獣医師による身体検査


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