2019 年に、免疫介在性溶血性貧血(immune-mediated hemolytic anemia:IMHA)の診断・治療に関するコンセンサスステートメントがアメリカ獣医内科学会(American college of veterinary internal medicine:ACVIM)より発表された。IMHAは赤血球に対し自己抗体が産生されることで発症する代表的な免疫介在性疾患であり、特に犬では溶血性貧血の原因として一般的であること、貧血以外の合併症も多く致死率が高いことから、その診断・治療の理解は重要である。

コンセンサスステートメントは、診断編と治療編の 2 部構成となっている。
・ACVIM consensus statement on the diagnosis of immune-mediated hemolytic anemia in dogs and cats.
・ACVIM consensus statement on the treatment of immune-mediated hemolytic anemia in dogs.

診断編は犬と猫に関する記述であるが、治療編は犬のIMHAに限定されている。猫のIMHAの発生率は犬に比べ低く治療に関する情報が少ないこと、また病気の特徴も異なることから、犬の治療編の内容を単純に猫に外挿することはできない点には注意が必要である。

連載第 8 回目は、免疫抑制剤の漸減方法について解説する。

IMHAの活動性指標の多くが改善していればプレドニゾロンの投与量を25%漸減する

治療開始後にPCV/Hctが安定し>30%を2週間維持できており、IMHAの活動性指標(球状赤血球、赤血球自己凝集、血清ビリルビン値、網状赤血球数)の多くが改善していれば、プレドニゾロンの投与量を25%漸減することを推奨する。ステロイドに起因する副作用を軽減する目的で2nd line免疫抑制剤を併用している場合、併用薬の投与量は変えずに、プレドニゾロンの漸減率をより高く(25~50%)することも可能かもしれない。

推奨レベル:強い

根拠:この推奨事項は主にパネルメンバーの臨床経験に基づいている。8人のパネルメンバーのうち1人は、血清ビリルビン値が正常範囲内に低下するまでは漸減すべきではないという意見であった。そのかわり、プレドニゾロンと免疫抑制剤を併用しており、①免疫抑制剤の副作用がより重度である場合、または②費用面で免疫抑制剤の継続が難しい場合には、免疫抑制剤の投与量を段階的に減らすことができると主張した。しかしながら、一般的にはグルココルチコイドに関連した副作用の方がより頻度が高く投与量に依存しているため、我々はプレドニゾロンを先に漸減することを推奨する。