カンピロバクター食中毒

特徴的なS字状を示す細菌であるCampylobacter jejuni(Cj)はカンピロバクター食中毒の主な起因菌として知られています。Cjは主に鶏や牛の腸管に生息し、食肉処理過程で食肉を汚染し、加熱不十分で食べるとヒトに食中毒を起こします。非常に少ない菌数(数百個)でヒトに感染し、下痢(水様便、時に血便)、腹痛、発熱などの胃腸炎を起こすことが特徴とされています。通常は治療を必要としませんが、重症例ではマクロライド系抗菌薬やフルオロキノロン系抗菌薬による薬物治療がまれに行われることがあります。

一方、Cjは食用動物ばかりでなく、犬や猫の糞便からも検出されることが知られています。丸山らは、少し古い調査ですが、合計 386 頭の犬と 122 頭の猫からCjの分離を試みたところ、12 頭の犬(3.1%)と1 頭の猫(0.8%)から検出されたことを報告しています1)。Cj陽性犬の 13.5%が 1 歳齢以下の若い子犬でした。また、青木らは犬の糞便から 12.7%(9/71)と高率にCjが分離され、小児下痢患者からの分離株と遺伝子型が一致したことを報告しました2)。つまり、ヒトと犬間でのCjの伝播を示唆しています。犬や猫もヒトと同様にCjの感染により、下痢、嘔吐、食欲不振、脱水を起すカンピロバクター腸炎を起こすことがあります。

2019 年にアメリカ保健福祉省所管の感染症対策に関して中心的な役割を担う疾病予防管理センター(CDC)は、ペットショップの子犬に関連する多剤耐性Cj感染症の発生を報告し、ペットの飼い主とペットショップ従業員への注意喚起を行いました3)。子犬は室内で飼育する可能性が高く、子供も触れる機会が多いことから、今回の報告の概要を紹介したいと思います。