関連法規について

野生動物の中にはペットとして飼育することが全く認められていないものもあります。「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)により人に危害を加える恐れのある危険な動物種とその交雑種を特定動物といい、2020年6月から愛玩目的で飼養することが禁止され、その飼育は動物園や試験研究施設に限られます。特定動物には、トラ、クマ、ワニ、マムシなど、哺乳類、鳥類、爬虫類の約650種が指定されています(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/sp-list.html)。

また、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(外来生物法)¹⁾に規定される特定外来生物も飼育が原則禁止されています(図3)


▲図3.特定外来法の概要 
https://www.env.go.jp/nature/intro/1law/files/gairaihou_gaiyou.pdf



特定外来生物とは、外来生物(海外起源の外来種)であって、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、又は及ぼすおそれがあるものの中から指定された生物をいいます。特定外来生物は、生きているものに限られ、個体だけではなく、卵、種子、器官なども含まれています。この法律の目的は、特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、生物の多様性の確保、人の生命・身体の保護、農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資することです。そのために、問題を引き起こす海外起源の外来生物を特定外来生物として指定し、その飼養、栽培、保管、運搬、輸入といった取扱いを規制し、特定外来生物の防除等を行うこととしています。特定外来生物に指定されたら、国内での飼養、運搬は原則禁止で、輸入も禁止されます。

また、当然のことながら野外への放出も禁止されます。法律に違反した場合は、懲役もしくは罰金などの罰則も設けられています。最大、3年以下の懲役と1億円以下の罰金刑とされ、重大な犯罪とされています。現在指定されている動物では、哺乳類25種類、鳥類7種類、爬虫類21種類、両生類15種類、魚類26種類、昆虫25種類、甲殻類6種類、クモ・サソリ類7種類、軟体動物等5種類とされています(https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list.html)。

特定外来生物の写真集もありますので参考にして下さい(外来種写真集 | 日本の外来種対策 | 外来生物法 (env.go.jp))。特定外来生物として規制される前に飼育していた動物は、許可(https://www.env.go.jp/nature/intro/1law/shiyou/tetsuduki.html#sec1)を取った後に、引き続き飼育することができますが、繁殖は認められていません。また、外来生物法では被害を及ぼす恐れがあるかどうか未判定の動物を未判定外来生物として指定し、輸入に当たっての制限を設けています。

次に正規な手続きを経てペットショップなどで販売された野生動物を飼育するにあたって、注意することについて述べたいと思います。まずは脱走などの野外の放出を防ぐために、物理的に何重もの方法で阻止する手段を講じることです。特に外来種の多くは天敵がおらず、自然繁殖することで生態系に強烈なダメージを与えるからです。このような事例はこれまでも何回も報道されてきました。例えばネズミとハブの駆除目的で沖縄に導入されたマングースは、脱走などで野外に放出された結果、片っ端から捕まえやすい動物を捕食し、天然記念物であるヤンバルクイナが減少したとも言われています。

野生動物を飼育すると言うことは、厳重な管理下で終生面倒を見る覚悟が必要であり、それは飼い主の最低限守らなければならない責務と言えるでしょう。一方、野生動物がどのような病原体を保有しているかといった疫学情報は極めて限られており、飼い主との接触は外傷とともに常に危険が伴います。野生動物にはヒトに感染する病原体を保有している個体も多いはずで、既知の人獣共通感染症の感染源になるだけでなく、未知もしくは希で重篤な感染症の病原体を持つ可能性もあります(表1)


現在猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症の原因ウイルスも元々はコウモリに由来しています。野生動物に過度に接触することは避けるとともに、触れ合った後の手指の消毒や糞尿の衛生的な処分をお願いしたいと思います。