最近、特に話題となっているイヌやネコなどの伴侶動物からヒトへ感染する人獣共通感染症に
「重症熱性血小板減少症(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome; SFTS)」があります。

SFTSに罹患したヒトが多数死亡しており、診療に携わる獣医療関係者のみならず伴侶動物を飼育する方にとっても、知っておいていただきたい重要な感染症だと思われます。そこで今回はSFTSの概要を紹介するとともに、動物病院に勤務する獣医師と動物看護師がネコから直接感染した事例について紹介したいと思います。

SFTSウイルスの、ヒトへの感染経路と感染例

SFTSウイルス(SFTSV)は今から9年前の2011年に中国で初めて報告されたもので、このウイルスによるSFTSはかって人類が経験したことのない新規の感染症(新興感染症)になります。このウイルスは一般にダニ(フタトゲチマダニなど)の生活環で維持されていますが、時にウイルスを保有するダニに咬まれてヒトが感染します(下図参照)。


引用元:国立感染症研究所:IASR Vol. 37 p. 51-53: 2016年3月号


感染したヒトと濃厚に接触すると、ヒト-ヒト感染も成立すると言われています。症状は感染して1から2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状が多くの症例で認められ、その他頭痛、筋肉痛、意識障害などの神経症状、リンパ節の腫脹、皮下出血や下血などの出血症状を示します。この感染症で最も特徴であるのは、致死率が非常に高いことです。

日本では2013年1月に海外渡航歴のない方が感染したとの報告が最初です。したがって、伝播経路は不明ながら最初の報告から2年後にSFTSVは国内に侵入していたことになります。これまで国内で517名(2020年5月27日現在)のヒトの感染例が報告され、70名(13.5%)の方が亡くなっています。

発症はダニの活動時期でもある5~8月に多く、西日本に多いことが特徴とされています。特に症例が多いのは、宮崎県、鹿児島県、山口県、高知県、愛媛県、広島県となります。このウイルスを媒介するダニは日本各地に生息しているのに不思議な話です。

現在、有効な治療薬はなく主な治療は対症療法となり、予防するワクチンもありません。