■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の24月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

コアラはオーストラリアの特定地域に限定して生息する哺乳類で、単独に樹上生活をしている動物です。夜行性であるため日中の動きは緩慢で愛嬌があり、外貌がぬいぐるみのように可愛いことから動物園では人気の的となっています。日本には 1984 年に初めて輸入され、一大コアラブームが巻き起こりました。最近ではジャイアントパンダに人気が奪われましたが、今なお動物園のアイドルとなっています。このコアラですが 2019 年 9 月頃からオーストラリア南東部で大規模な森林火災が相次ぎ、地域に生息するコアラの約 30%が死亡し生息数が激減しました¹⁾。さらに最近の報道によれば、コアラにクラミジア感染症が蔓延し、絶滅の危機に瀕しているようで²⁾。そこで今回はコアラが絶滅の危機に直面する森林火災とクラミジア感染症の現状について紹介したいと思います。