コアラと森林火災

コアラ( Phascoalrctos cinereus )は、コアラ科コアラ属に分類される有袋類で、オーストラリア東部の森林地帯に生息しています。日本語名は熊とは関係ないもののコモリグマ、またはフクログマとも呼ばれています。毒性の強いタンニンや油分を多く含むユーカリの葉を好んで食べるため、熱帯雨林や温帯のユーカリ林などで生活しています。ユーカリといっても特定の種類のユーカリを食べるグルメのようです。ユーカリは消化が悪いのですが、コアラの盲腸内で発酵させることで毒素を分解して吸収するそうです。特徴的な腸内フローラを保有していると考えられますが、その機能はまだまだ分からないことが多いとされています。通常は単独性で樹上生活をしています。夜行性の動物であるため日中の動きが少ないのですが、四肢の筋肉が発達しており、樹上を素早く移動できます。一日の内、18?20時間は寝ているか休んでいるとのことです。生息する場所は、オーストラリア全域でなくクイーズランド州南東部、ニューサウスウェールズ州東部、ビクトリア州、南オーストラリア州南東部に限局しており、個体数は約 10 万頭以下と推定されています。

このようなコアラですが、近年、森林火災やクラミジア感染症の流行により個体数が激減しています。まず、森林火災ですが、2019 年 9月 ごろから南東部のニューサウスウェールズ州やビクトリア州で大規模な森林火災が相次ぎ、2020 年 2 月まで続きました¹⁾(図1)


▲図1.森林火災と火傷を負ったコアラ
https://www.huffingtonpost.jp/entry/australia-bushfires_jp_5e12d5abe4b0b2520d24412b




異常な高温と乾燥という環境変化の下、消火活動も難航して消火までに長期間を要しました。2020 年 1 月には、類焼面積 10,700,000 ヘクタール以上で、建物被害 5,900 棟以上、死者 29 名に達しました。当然のことながら野生動物にも影響し、哺乳類、鳥類、爬虫類など 10 億以上の生命が失われたと試算されています。森林火災により餌の確保が困難になることから、生き残った動物の絶滅も危惧されています。地元メディアによると、最大 8,000 頭のコアラが死んだと報じ、連邦政府も「地域に生息するコアラのうち 30%以上が死んだ可能性がある」と述べました¹⁾。また、ニューサウスウェールズ州議会は、政府が介入しなければ2050年までに州内から野生のコアラがいなくなると警告しています³⁾。