■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の19月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

新型コロナウイルス感染症の陰に隠れて目立たなくなった薬剤耐性菌感染症ですが、日本で2017年にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌とフルオロキノロン耐性大腸菌による感染症で約 8,000 名が亡くなる¹⁾など、今でも医療において深刻な問題となっています。薬剤耐性(AMR)の問題は抗菌薬の不適正な使用が主な原因であり、医師や獣医師のみならず広く国民が抗菌薬についての知識や理解を深めて正しく使って欲しいものです。

しかし、残念なことに国民にとってはそれほどの関心事でないようで、さらに普及・啓発活動を強化することが求められています。これらの活動を進めるにあたって、国民の意識を知ることは極めて重要と考えられます。そこで、国立国際医療研究センター病院のAMR臨床リファレンスセンターでは今年も一般の方々を対象に、「抗菌薬・抗生物質に関する意識調査」²⁾を実施し、その結果を公表しています。今回はこの意識調査成績の概要を紹介し、未だ抗菌薬や薬剤耐性に関する理解が不十分である実態を知っていただきたいと思います。