アレルゲンと品種の関係性

動物により引き起こされるIgE抗体を介する即時型過敏症としては、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、アナフィラキシーがあるとされ、最も頻度が高いものです。これらの過敏症を引き起こす主なアレルゲンですが、猫ではFel d 1から8までの8種が知られており、犬はCan f 1から7までの7種が知られています¹⁾。

この内、猫ではFel d 1が主なアレルゲンとされ、猫アレルギー患者の90%以上が陽性を示します。一方、犬ではCan f 1が主要なアレルゲンでイヌアレルギー患者の60%以上が陽性であり、Can f 5にも陽性といわれています。今回報告されたワクチンとも関連しますので、Fel d 1についてさらに説明したいと思います(表1)。


Fel d 1は30~38kDaの上皮粘膜から分泌される低分子タンパク質ファミリー(secretoglobin)に属するタンパク質で、CH1(chain 1/Fel d 1-A)とCH2 (chain2/Fel d 1-B)遺伝子により産生されます。産生場所は当初、猫の毛づくろいの習性のため、唾液のなかにあるものが毛についたと考えられていました。しかし、その後、猫が毛づくろいができないように体の一部をおおい隠して検討したところ、隠した部分と他の部分のアレルゲン量が同じであったことから、Fel d 1は唾液だけでなく皮脂腺や皮膚など体の表面にもあることが判明しました。雌猫の産生量は雄より低いとされ、去勢猫も雌と同じく低いレベルですが、いずれもネコアレルギーを誘発することには違いがありません。純粋のシベリア猫のFel d 1の産生量が低いことが知られており、品種との関連は不明な点が多いようです。