病機とは

③気血津液の異常
気の異常としては、気の量の不足(気虚、気陥、気脱)と気の流れの異常(気滞、気逆)があります。
臨床でもよく目にする「気虚(気の不足)」は、どのようにして起こるでしょうか。例えば、先天の精(生まれるときに親からもらってくる精)や後天の気の不足でも起こりますから、例えば栄養状態が悪い繁殖犬や猫から生まれた仔犬や仔猫は、はじめから先天の精不足があり、気の不足へと繋がりやすいということになってしまいますね。
また、消化・吸収を主に担当する「脾」の機能が落ちれば、気がうまくつくれませんから、やはり気不足・気虚を起こしやすいです(第8回参照)。さらに、前回の病因でも出てきた、労倦(過労や、過度の交配が含まれます)や、大病や慢性疾患によっても気の不足は起こりますので、問診や脉の状態から、気の不足が起きていないかを診断していくことは非常に大切です。気が足りない場合は、気を補う「補気」を鍼や灸の手技で行ったり、気を補う漢方薬を処方することとなります。

気陥は、脾の昇清作用が落ち込み、内臓下垂などを引き起こす状態、気脱は大出血などにより気が一気に抜けてしまった状態で、ショック状態をイメージしていただくと良いと思います。


気滞は、その名の通り「気の滞り」ですが、ストレス(肝の気の鬱滞・・・第7回参照)や、痰湿といって津液の流れが悪くなって生じるものからも起こります。気滞の場合は、気の巡りを良くする「行気」が得意な経穴を選んだり、気の巡りを良くする漢方薬を選んだりします。


血の異常としては、血虚、血?、血熱があります。
血虚は血の不足、血?は血行不良、血熱は血に熱がこもった状態です。婦人科系の不調はこの血の異常が関与していることが多く、例えば血虚だと月経不順や経血量の減少、血?だと血の塊が生じやすくなったり、ひどくなると子宮筋腫などの原因にもなります。また、血?では、「刺痛」と言って、刺すような痛みという診断のヒントになる痛みも生じます。

気と血は密接な関係にあり、お互いの異常が及んだ状態になりやすいです。
気滞血瘀、気不摂血、気随血脱、気血両虚、気血の経脈不養などがあります。


津液の異常には、内燥、内湿、湿に熱がこもった湿熱がありますが、動物でも湿熱が原因と考えられる膀胱炎や皮膚炎をみることがあります。

④五邪内生は、外邪である六つの気、六淫と似た状態がからだの中で生じることで、内風、内寒、内燥、内湿、内火の五つがあります。前回の病因でも出てきた、六淫の表と似ていることがわかるでしょうか。


今回は、より細かい内容になりましたが、陰陽や気血津液のバランス異常によって病気が生じて進行していくということがざっくりとおわかりいただけたでしょうか。
それでは皆様、次回までお元気でお過ごしください!


青木志織 Shiori Aoki

ウィルどうぶつクリニック

大学在学時より中医学を志す
日本獣医中医薬学院卒業
1 級獣医中医師/獣医推拿整体師
現在、中医学気功も勉強中

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