臨床・教育・研究の一翼を担う

― 手探りで進む時期があったということですね。

髙野先生: “与えられた環境でできることや役に立てることを常に考えていくことで、よい出会いがおのずと増え、先がみえてくる”と、今は考えることができています。また、実際にそうすることで、道が開けてきた気がしています。今の勤務先は、自身の夢を叶えることができる場所ではないかと思えています。

ここは民間の二次診療施設ですが、循環器専門病院として診療に申し分のない設備が整っているうえ、豊富なデータが集まることで臨床研究も行っていくことができます。セミナー講師や麻布大学との提携など教育に関わる機会も多く、海外とのつながりも増え、たくさんの貴重な経験ができています。ここの立ち上げに呼んでいただけた私は、本当に運がよかったと思っています。

― 今後、循環器科はどのように発展していくとお考えですか。

髙野先生:専門医療を行う二次診療施設は、ある程度集約されていくのではないでしょうか。というのも、循環器科は高度な治療を行うため、どうしても特殊で高価な機材を使うことになり、かなりの設備投資が必要になります。また、高度医療になるほどチーム医療が不可欠になるため、診療・手術・術後管理を適切にできる、経験豊かなスタッフが一定数必要になります。となると、今後はどんどん施設を増やせばいい、という方向にはなりません。また、人的および設備的に充実した施設は、臨床研究や教育など、現在大学がメーンで行なっている使命の一翼を担っていけるのではと思っています。

また、海外との連携がもっと増えてくると考えています。海外での学会発表や講演、出張の手術、当院を受診する海外からの患者、見学にこられる海外の獣医師など、ここ5年で海外との接点がとても増えています。2020年からはアジア獣医内科学専門医の研修医制度もスタートし、光栄にもその運営に携わっていける立場になることができました。この制度がうまく機能すれば、日本にいながら国際的な専門医の資格が取得できるようになり、またアジアの学生や研修医が、日本の大学や二次診療施設に来て必要な単位を取得するという、国際交流も活発になります。時間はかかるかもしれませんが、とてもやりがいのある仕事になると思っており、今から楽しみです。海外で通用する専門医の資格を日本で取得できるようになることで、欧米の専門医とも対等にディスカッションできるようになり、新しい見識をどんどん増やすことができます。日本の若手の先生にとっても、将来の選択肢の幅が広がっていくのではないかと考えています。

― 最後に、若手の先生方にメッセージをお願いいたします。

髙野先生: 今は“学ぶツール”が非常に増えています。学会も増えていますし、二次診療施設が増加したおかげで、大学病院に行かなくても優秀な先生のもとで学べるし、インターネットから得られる知識も膨大です。自身でもやる気のあるメンバーで勉強会を立ち上げ、皆で情報と経験を共有し、レベルアップを図ろうと思っています。このような活動も若手の先生の卒後教育の一環になれるのではないかと考えています。数あるツールから自身に必要なものを選択するという難しさもありますが、いろいろなツールを活用して、是非、興味のある分野の知識を深めてください。

実は私もまだまだ勉強不足で、いまだに毎日「え?こんなことあるの?」の連続です。だから面白い。私は、この「面白い」が獣医師の仕事を続けていくための原動力だと思っています。みなさんもぜひ、「いつもと違う」を見つけたら、「面白い」と感じるようになってください。

あとは、インフォームド・コンセントは獣医師にとって重要だと感じています。当院では、初診に3時間ほど時間を取りますが、そのうち1時間弱は飼い主への説明や対話にあてています。というのも、循環器科で行う手術やカテーテル治療は、大動脈や肺動脈など大血管に触れることが多く、比較的リスクの高い施術となるからです。初診から手術までの時間は限られていることも多く、飼い主と時間をかけて信頼関係を築くことが難しいため、私は初診時には不安を与えないように蓄積したデータや手術のメリット・デメリット・コストなどをしっかりとお伝えすることを心掛けています。できるだけ、飼い主の考えや気持ちに寄り添い、一緒に治療方針を考えていこうというスタンスでいます。 このスタンスは、ある程度の診療時間を要するため、二次診療施設だからこそできるのかもしれません。しかし、飼い主がこの子のために“一番よいと思う道”を選んでもらうために尽力する、そこに獣医師の基本があると私は思っています。


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髙野 裕史 Hiroshi Takano

経歴
2008年 麻布大学獣医学部獣医学科卒業
2012年 麻布大学大学院獣医学研究科獣医学専攻博士課程修了、博士(獣医学)取得
2011年~2013年 日本学術振興会 特別研究員
2012年~2014年 酪農学園大学獣医学群獣医学類伴侶動物医療分野 非常勤講師
2014年~現在 JASMINEどうぶつ循環器病センター 勤務医
2015年~2017年 東京大学大学院農学生命科学研究科附属動物医療センター 特任研究員/特任助教
2017年~現在 アジア獣医内科学会専門医(循環器)

※肩書などは、インタビュー実施当時のものです。

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