国を越えて共通する飼い主の心理

―これから行動診療に携わりたいという若手の先生方にアドバイスをお願いします。
 犬・猫であれば、「犬という動物とは?」「猫という動物とは?」という本質を理解するとともに、犬種・猫種ごとの能力や性格の違いもしっかり勉強してほしいと思っています。今はどの病院でも「動物に優しい診療」を目指していますが、「こうしなさい」というマニュアルに従うのではなく、「犬(猫)はこういう動物だからこうなる」という原理を理解してほしいです。そうすると、診療もハンドリングも入院のケアも、格段にスムーズにできるようになります。

 獣医師はヒトの小児科医と同じです。我々は病気を治すだけではなく、「普段どういう世話をすればよいのか」「困った行動にどう対処すべきか」といったように、飼い主からは生活面でのアドバイスも求められます。技術を磨くことも大切ですが、飼い主と一緒に考え、支えてくれる獣医師がこれからも求められると思います。「うちのコを分かってくれる獣医が最高」…、これは国を越えて共通する飼い主の心理です。
 とは言え、行動診療の習得や実施は、時間を要する分野でもあります。日々の診療で飼い主全員からの要望に応えることは難しいでしょう。ですから、私たち「日本獣医動物行動研究会」では、行動診療のエキスパートである認定医を増やすための教育を行っております。また、私が勤務するVe.C.JAPAN(ベックジャパン)動物病院グループでは「こころの健康診断」というアンケートを行い、動物本来の行動が満たされていない場合や、心配な行動がある動物の飼い主さんへのメールアドバイスも行っています。こういう取り組みもぜひ参考にしてください。


藤井 仁美

経歴
1990年      東京農工大学 農学部 獣医学科卒業
1990~1994年   都内動物病院勤務
1995~1997年   シンガポールの動物病院にボランティアとして勤務
1998~2008年   イギリス ロンドンの動物病院にボランティアとして勤務
2008年~     
日本に帰国し現職に至る
現在は、 Ve.C. JAPAN(ベックジャパン)動物病院グループ の代官山動物病院および自由が丘動物医療センターにて行動診療を行っている。

資格
1990年 獣医師免許取得
1999年 英国応用ペット行動学センターにて研修
2001年 同センター公認のペット行動カウンセラーおよびインストラクター資格を取得
2007年 英国サザンプトン大学院にて動物行動学を専攻
2009年 同大学院終了後、伴侶動物行動カウンセラーのディプロマを取得
2013年 日本獣移動物行動研究会の獣医行動診療科認定医の資格を取得

こちらの記事もおすすめ