自分が間違えることを想定して、動く

―最後に、若手の先生方にアドバイスはありますか?
 誰の言うことも鵜呑みにするな、と伝えたいですね。これは臨床獣医師も含め、科学者には絶対に必要な視点です。論文や書籍やセミナーの講師が言うことは、あくまで彼らの意見であり、真理ではありません。論文で発表されたことが10年後に覆ることはよくあります。

 もちろん、論文や成書が役に立たないと言いたいわけではありません。そうしたたくさんの意見の中から何を選択すべきかを、常に自分の頭で考える姿勢をもってほしいということです。どの意見を信じるかを決めるひとつの手がかりは、その意見に説得力があるかどうかです。例えばデータの取り方が適切で、自分で取ったデータや実際に診た症例を紹介している人の意見には説得力があります。
 


それから、“自分が間違えることを想定して”動くようにすること。用心深くあることは失敗に対する最大の保険となります。 人間は“最初に判断したことに捕らわれる”のだと思います。そして獣医師は経験を積むほど自信を持つものだと思います。ということは、経験を積めば積むほど間違えやすくなる側面があることを認めなくてはならない。自分の行動を常に疑い、いろいろな可能性を考え、シミュレーションすることが大切だと思います。


金本 英之

2006年 麻布大学獣医学部獣医学科卒業
2010年 東京大学大学院 農学生命科学研究科 博士課程(獣医学専攻)修了
2011年 ユトレヒト大学 伴侶動物臨床獣医学研究室 客員研究員
2016年 東京大学大学院 農学生命科学研究科 獣医内科学研究室 特任助教
2017年 DVMsどうぶつ医療センター横浜 二次診療センター 内科医長

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