一次診療の先生方に、書籍を通して伝えたいことはなんでしょうか。

まず、先ほどから申し上げているように、なんでも検査機器に頼りすぎないでやる、というのも臨床の一つだということです。例えば、学生にある疾患についての診断方法について説明しろなんて試験をだすと、診断方法として超音波検査、電動源検査などと解答するのですが、それはあくまでも検査の方法(道具)であって、その検査でどういう所見が得られることが診断的なのか記されない場合が多くあります。
そして、そういうモノを使うのであればうまく使わないといけません。
この本にも書かれていますが、心エコー図検査を行うときには基本的には横向けにしなくてはなりません。しかし、心臓が悪くて苦しい時には横向きにできないことも多いので、先行する聴診を含めた身体検査しっかり行い、心エコー図検査による負担を軽減します。
僧帽弁閉鎖不全症に起因した肺高血圧症で右心不全になると、循環血流のうっ滞から頸動脈の怒張やうっ血性の肝腫大をともなう腹水の貯留を認めることがあります。これは、エコー図検査の前に行う身体検査で明らかにすることができます。このように、機器に頼リ過ぎずに状態を把握するということを、一次診療の先生に伝えたいポイントです。


―― 読者の先生方へ書籍のポイントや活用方法を教えてください。

まずは、まんべんなく読んでもらいたいですが、この本は分からないときにすぐぱっと開いて問題が解決する、というような位置づけだと思っています。
ソフトカバーで厚すぎず、各症例に対して画像やデータがしっかり載っているので、薬剤の種類や容量まで読んでもらうとしっかりと分かると思います。そして、そんな中で、症例ごとにこの場合はこうだったというのが書かれていて、ゴールドスタンダードかつプラスアルファの部分も入っているので、治療、診断をするにあたって最初に読んでいただける本かなと思います。
内容を全部理解した上でやってくださいというよりも、最初はもうパラパラと斜め読みでもいいので、実際に症例が来た時に、「あ、この本のこのページにこういうことが書かれていたな」と思いだしてもらえればと思います。
読みやすい文体になっているので、パパっとめくっても、自分が求めていた情報を非常に見つけやすく、分かりやすい本になっています。