興味の中心、やりがいを追求してスペシャリストの道へ

―― どのように心エコー図検査を教えていきたいとお考えですか?

まずは、エコー画像は“良い”ものでみる、ということの大切さを伝えていきたいですね。しかし、実際の臨床現場では暴れてしまう犬や猫がいたり、診療時間の制約があるなど、画像を撮ることばかりに注力することができないことも当然多いとは思います。その中でも、できる限り良い画像を撮ろうという姿勢は小山先生から学ばせていただきましたし、良い意味での妥協の仕方も勉強させてもらいました。そうしたコツやノウハウも含めて引き継いで、臨床に即した教え方をしていきたいと考えています。

―― 教育にあたって、先生が大切にしていることを教えてください。

エコーなどの実技系の授業では、一回経験することを大事にしていますので、最初は私の手技をみてもらい、それから各自で描出してもらう時間を取っています。まずは自分で描出に取り組んでみることで、大学病院の診療を見学する際も、「画像をこうやって描出しているんだな」、「画像の所見からこういう判断をするんだな」ということが理解しやすくなりますからね。また、獣医療は答えのない診療やまだまだ未解明の診断や治療も多いので、病気の表面的な知識や治療法だけでなく、考える素材やきっかけも伝えるように心がけています。そうすることで、獣医学の楽しさを存分に伝えたいです。一方で、教育の現場では学生の素朴で率直な質問や疑問、学生ならではの新鮮な視点から、こちらが勉強になったり、教えて頂いたりすることも多いですね。


―― 最後に、若手獣医師へのメッセージをお願いします。

スペシャリストとして突き詰めていく分野は、まずは幅広くいろいろとやってみて、その中で自分が一番興味を持ったもの、あるいは楽しさややりがいを感じたものがお勧めかもしれません。可能であれば研修に参加するなど、実際の診療をみるととても勉強になると思います。その分野を目指すスペシャリストの先生を訪ね、診療をみることで、その先生の考え方やその分野の現状を理解しやすくなります。「スペシャリストとして自分がこうなりたい」というイメージに近い姿なのかどうかも、実際に接する方が分かりやすいですしね。将来、循環器のスペシャリストが出てきて、一緒に議論できることを待ち望んでいます。また、最近は認定医、専門医という制度があります。取得を目指していく中での勉強は大変身になりますので、自分がスペシャリストになりたい分野にそのシステムがあれば、ぜひ活用してください。また、将来獣医になりたいと言う人に会ったときに、胸を張って「こんな良い仕事はない」、「楽しいぞ」、「ぜひなってね」と言えるような獣医業界を作りたいです。皆さんも一緒に盛り上げていきましょう。よろしくお願いいたします。