教育と研究、臨床が融合する、大学からの獣医療への貢献
―― 先生は診療、教育、研究と幅広く取り組みつつも、常に臨床に貢献することを考えられていて……。ある意味では先生が理想の獣医師像とされている、お父様のようなオールラウンダーですね。
そうなりたいと思っています(笑)。診療のオールラウンダーではないかもしれないですが、さまざまな分野から獣医療に幅広く貢献したいという「ミライ」を描いています。
大学は臨床と教育と研究が、良い意味で融合している場所だと感じていて、これが一番好きな形です。幅広く取り組むため、本当に多くの活動をしているなと自分でも思いますが、これらの相乗効果で現在の自分があると思っています。臨床に即した、臨床に還元できる研究、研究で得た知識や技術を応用した診療、そしてそれらを現場に普及させる教育、三者に全力で向き合っています。
―― 影響を受けた先生はいらっしゃいますか?
大学時代に所属していた内科学研究室で指導いただいた小山秀一先生の存在は大きかったです。小山先生は内科学の知識が豊富なことはもちろん、いわゆる職人のような方で、手取り足取り教えられるというのはなかったのですが、その背中を見て勉強させていただいたという思い出があります。
―― 先生の背中から、どんなことを学ばれたのでしょうか?
今の私の礎にもなっているのですが、「画像診断は良い画像でみる」ということです。“良い”とは、正しく描出された、画像としてきれいな、かつ異常所見などを判読できるという意味です。特に循環器領域では心エコー図検査が実施されますが、まずはきれいなBモード画像を取得すること、そしてその画像からの判読、治療へのつなげ方を教えていただきました。
獣医療においては、超音波検査設備がない病院を探すほうが難しいくらいに普及しているので、心エコー図検査を日々の診療で活用したいと考えている先生も多いかと思います。しかし、心エコー図検査の原理や、画像の取得や評価の難しさから、一般臨床の先生の中には、「ハードルが高い」と思われている方もいるかもしれません。心エコー図検査は非常に有用な検査なので、そうした「心エコー図検査は難しい」というイメージを大学教育から変えていきたいですし、教育の面からも獣医療に貢献していきたいと思っています。