普及・啓発活動は限定的で今後も強化が必要

次に抗菌薬の飲み方を質問しました。「家にとってある抗菌薬・抗生物質がある」との回答は17.9%で、 「とっておいた抗菌薬・抗生物質を飲んだことがある」との回答は16.5%でした。これらの抗菌薬・抗生物質の正しい知識は、先と同様に若年層でやや低い傾向がありました。自己判断で要指示医薬品である抗菌薬を勝手に飲んでいるということで、今後も正しい知識を普及・啓発しなければならいことを示しています。

さらに薬剤耐性について質問しました。「薬剤耐性、薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがあるか」を訊ねたところ、あると答えた方が36.9%で、ないと答えた方が63.1%でした(図3)。また、「薬剤耐性を避けるために必要な時でもできるだけ抗菌薬を避ける」は間違いと正しく回答した人は40.5%で、不正解と「わからない」と回答した人を合わせると59.5%でした。

さらに「薬剤耐性の感染症」について怖いと回答した人は94.2%で、約8割が自分や身近な人が近い将来感染するか、するかもしれないと回答しました。 薬剤耐性に対して特に何もしないと回答した人は60.5%でした。


図3.「薬剤耐性・薬剤耐性菌という言葉を聞いたことがあるか?」の問に対する回答


図4.とわの森三愛高校生による抗菌薬の適正使用アンケート結果

以上のことから、2016年度から様々な媒体を利用して国民に向けて重点的に取り組んできた普及・啓発活動ですが、その効果は限定的といえそうです。特に抗菌薬がウイルスに効き、かぜに対して有効であると考えている方が未だ多く存在し、昨年の調査成績と変わらないことが残念に思われます。それも若年層に理解不足が多いことは、今後の普及・啓発活動の方向を示す結果とも思われます。なお、酪農学園大学附属とわの森三愛高校の生徒が2019年度に実施した全校生徒や親と教員に対するアンケート結果とも極めて近似しています(図4)。したがって、高等教育はもちろんのこと、初等・中等教育においても抗菌薬や薬剤耐性菌に関する正しい理解を得るようなカリキュラムを必要としているようです。獣医師は医師と並んでこの分野の専門家である訳ですので、日頃の臨床現場においても飼い主に対してできる限り動物のみならず人間における抗菌薬の適正使用など正しい知識を普及・啓発する役割があると考えます。



1)Tsuzuki S, Matsunaga N, Yahara K, Gu Y, Hayakawa K, Hirabayashi A, et al. National trend of blood-stream infection attributable deaths caused by Staphylococcus aureus and Escherichia coli in Japan. J Infect Chemother. 2020;26(4):367-71.
2)AMR臨床リファレンスセンター(国立国際医療研究センター病院):抗菌薬意識調査レポート2021  http://amr.ncgm.go.jp/pdf/20211004_report.pdf

これまでの連載は下記リンクから見ることができます
https://media.eduone.jp/list/106/110/


田村 豊 Yutaka Tamura

酪農学園大学名誉教授

1974年 酪農学園大学酪農学部獣医学科卒業
1974年 農林水産省動物医薬品検査所入所
1999年 動物分野の薬剤耐性モニタリング体制(JVARM)の設立
2000年 検査第二部長
2004年 酪農学園大学獣医学部獣医公衆衛生学教室教授
2020年 定年退職(名誉教授)

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