猫の心筋症の予後(の続き)

HCMの猫においては突然死が発生することもある。突然死のリスク因子はあまりわかっていないが、失神の既往、心室性不整脈、左心房の拡大、および左心室壁の限局性の運動性低下がリスク因子かもしれない。

ストレス、静脈内輸液、全身麻酔、あるいは徐放性のコルチコステロイドの使用と関連してCHFが発生したHCMの猫は、これらの因子と関連なくCHFが発生したHCMの猫よりも長く生存するかもしれない。また、CHFの入院治療中にNT-proBNPがより大きく低下したHCMの猫やCHFの治療開始後にCHFが消失したHCMの猫は、より長く生存すると考えられている。

ヒトのHCMにおいては左心室流出路の動的閉塞(Dynamic left ventricular outflow tract obstruction:DLVOTO)が合併症発生率や死亡率の上昇と関連する。一方、猫においてはDLVOTOは負の予後因子ではなさそうである。この点はヒトと猫のHCMの病態が本当に異なることを示唆しているかもしれない。しかしながら、ヒトと猫でのDLVOTOの定義の違いや、HCMの猫を対象とした後ろ向き研究に存在するバイアス(DLVOTOがある猫は心雑音によりHCMを早期に発見されやすいのに対し、DLVOTOがない猫は臨床徴候を呈するまではしばしばHCMを発見されない)を反映しているだけかもしれない。