最終回の本記事では、緊急時の対処方法について述べていきたい。「緊急時」といえど、「導入を始めたけど静脈留置が抜けていた」から「心肺停止」まで幅が広い。そのため、筆者がよく対処方法を聞かれる事例を選んでみた。

覚醒後のせん妄・興奮

術中に高用量のオピオイドを投薬しないよう局所麻酔薬などを積極的に使用するようになって、ずいぶん減ったが、麻酔から覚醒するときに泣き叫んだりバタバタと暴れる患者が稀にいる。主観的だが、術前から神経質な患者に多く見られるようにも思える。抜管直後に暴れるような場合は、まず疼痛が原因ではないか確認するために鎮痛薬(多くの場合、フェンタニル)をボーラス投与して反応をみる。

また、心疾患がなければ少量のメデトミジンの静脈投与も鎮静作用が働き効果的である。大きな疼痛を伴わない場合は、メデトミジンの他にブトルファノールやミダゾラムの静脈投与も考慮して良い。少量から始めて必要であれば追加投与をしても構わないが、場合によっては鎮静の効果が見られることに時間がかかる場合があるため、大人しくなる徴候が全くなかったのに急にぐったりとしてしまう場合があるので注意が必要である。