対象動物が何であれ、たとえ同じ疾患だったとしても、臨床症状や治療薬への反応は個体によってまちまちであり、教科書通りに物事が進むことの方が珍しい。麻酔・疼痛管理でもそれは例外ではなく、同じ症例が複数回の麻酔中にまったく違う反応をみせることもしばしばある。

麻酔管理で必要な観察力や瞬発的な判断力を身につけるには基礎知識による土台づくりが欠かせない。このスキマシリーズはそんな基礎への入門となればと思う。


連載第 3 回のテーマは薬剤。モニタリング同様、薬と麻酔管理は切っても切れない関係である。多くの場合、勤務している動物病院の決められたプロトコルを使用するだろうが、なぜその薬が選ばれるのかを理解しておくことは、副作用に備える観点からしても大事である。また、患者のニーズに合わせてプロトコルを改良できるように、獣医療の麻酔・疼痛管理で使用されている薬の知識をもっておくことが求められる。

薬の選び方

「全身麻酔をかけるための薬の選び方」とひとことで言っても、考えることは多々ある。考慮すべき事柄の例をあげてみる。

・鎮静の必要性
・疼痛の有無や度合い
・投与経路やタイミング
・全身麻酔の導入と維持方法
・薬の薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)
・薬の副作用
・患者の疾患、容体、内服薬
・全身麻酔下での血圧サポート方法

薬の副作用を最小限に止めながら必要とする効果を得ることが薬の投与には欠かせないが、近年ではそれを「マルチモーダル鎮痛法」「バランス麻酔法」と言って、複数の薬を扱うことでそれぞれの薬の使用量を減らしながらも(=副作用が出る可能性を減らす)十分な鎮痛を提供し、安定した麻酔管理を行う方法が推奨されている。一般的に使われる薬と概要(この記事では詳しい副作用などは割愛する)をにしてみたので参考になればと思う。