前回までは体内の水分布や各輸液製剤の特徴について説明しました。今回は日常的に輸液を行う病態の1つである脱水について説明します。脱水は2つに大別して考えなければいけません。では、脱水のキホンについて考えてみましょう。

volume depletionとは?

第 1 回(https://media.eduone.jp/detail/10559/)では、成犬であれば体重の約 60 %が水分であることを説明しました。細胞内液と細胞外液(間質液+血漿)には水分が2:1の割合で分布していますが、細胞内外では水分量だけでなく電解質の組成も異なります。

細胞内液にはカリウムが多く、細胞外液にはナトリウムが多くなっています。体内の水分布を考える上で、電解質の分布もとても重要な項目です。血漿と間質液を含めた細胞外液を構成する陽イオンは、ほとんどがナトリウムということになります(図 1)。


図1 正常な状態

そのため、出血や嘔吐などで細胞外液が失われてしまうと、脱水(volume depletion:細胞外液欠乏)になります。細胞外液から水とナトリウムが失われることをvolume depletionといいます(図2)。


図2 細胞外液から水とナトリウムが失われると脱水になり、細胞外液から水とナトリウムが失われる