5つの項目を解説
血圧測定
循環動態の指標として大事なのが血圧測定である。「体の隅々まで必要な分の酸素や栄養素が行きわたり、不要物が取り除かれているか」ということを、血圧測定を介して間接的に評価している。
一般的に平均血圧 60 mmHg以上を保つようにするが、腎臓病など疾患を抱える患者はそれよりも高い血圧(例えば平均血圧80 mmHg以上)を維持することが好まれる。
パルスオキシメーター
肺炎を伴う新型コロナ感染症の影響もあって聞き慣れた機器になったように思われるが、酸素と酸素の運び屋を担うヘモグロビンとの飽和度(結合度)を経皮的に測定してパーセンテージ(%)として表すものである。肺から取り入れられた酸素が血液に溶け十分にヘモグロビンと結合すれば、細胞が必要とする量が十分に行き渡っていると推測できる。ただし、高い数値であっても 95%未満は異常値であり、特に 90%以下は危険な状態である。
カプノグラフィー
空気中にはほとんど存在せず、体内の代謝によって発生し、肺から吐き出される二酸化炭素分圧を測定することは、気管チューブを使用する麻酔下では換気の指標になる。薬の副作用や全身麻酔の呼吸抑制によって一回換気量や呼吸数が減ると換気不足になり、体内の二酸化炭素分圧が上昇することは珍しくない。
二酸化炭素の上昇は血中pHの低下や血管拡張などに繋がり、体へ悪影響をもたらす可能性があるため、できる限り正常値を保つのが重要である。ただし、原則的に二酸化炭素が呼吸を促す刺激になるため、覚醒時には自発呼吸を促す目的で正常値より高い二酸化炭素分圧を許容することもある。
心電図
心臓は自発的に電気信号を発する。その信号が一定の道を通ることによって効率的な心筋収縮を起こし、血液の循環を促す。信号が正しく発生し、伝導されているかを可視化してくれるのが心電図であり、異常は不整脈として認識される。麻酔中に不整脈がみられた際は、緊急的な治療が必要なものかを判断する力が試される。
体温測定
恒温動物にとって体温維持は大切なプロセスであるが、麻酔中では体温維持が難しくなる。そのため、定期的に体温を測り、必要であれば体温サポートを試みるのが大事である。極度な低体温は凝固異常などの問題を誘発するため、軽視してはいけない。