対象動物が何であれ、たとえ同じ疾患だったとしても、臨床症状や治療薬への反応は個体によってまちまちであり、教科書通りに物事が進むことの方が珍しい。麻酔・疼痛管理でもそれは例外ではなく、同じ症例が複数回の麻酔中に全く違う反応をみせることもしばしばある。

麻酔管理で必要な観察力や瞬発的な判断力を身につけるには基礎知識による土台づくりが欠かせない。このスキマシリーズはそんな基礎への入門となればと思う。

全身麻酔と鎮静は何が違う??

そもそも、「全身麻酔」と「鎮静」の違いは何かと聞かれることがよくある。簡潔に述べると、導入薬の投与で行われる全身麻酔は鎮静とは違い、侵襲性のある刺激をもってでも意識消失が継続され、反射も抑制される。その上、全身麻酔下では循環や呼吸機能も低下し、介入が必要な場合も多いため、麻酔担当者によるモニタリングが大事になる。

しかし、全身麻酔をかけていないから事故が起こらないわけではなく、深めの鎮静をかけるときや全身麻酔からの覚醒後に行うモニタリングの役割を軽視してはいけない。