メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)は医療における最も重要な耐性菌感染症の起因菌であり、2017年には日本で約4,000名の方が亡くなっていると推定されています(※1)。最近では欧米の豚が家畜特有のMRSA(LA-MRSAと呼ばれています)を高頻度に保菌し、食肉を介してヒトにも伝播していることが報告されています。

私たちはMRSAが小動物病院の獣医師やスタッフなどの間で蔓延していることを報告してきました(※2)。今回はこれまでの小動物病院における成績を紹介するとともに、その対策について述べたいと思います。

数値から見る院内感染の考察

私たちは札幌市内の小動物病院の獣医師とスタッフ、病院環境(診察台、診察室の床、診察器具など)から材料を採取してMRSAの分離状況を調べました。2008年に最初の調査を行い、その後の感染防止対策の効果を検証するため、2016年にも再度調査を行いました。その結果を下図に示しています。


獣医師のMRSA保菌率は2008年で23%、2016年に16%と非常に高く、医師のそれを遥かに超えるものでした。なお、年度による保菌率に統計学的な有意差はありませんでした。動物看護師も獣医師ほど高くはないものの、2008年で10%、2016年で6%と医療に従事する看護師の保菌率より高いものでした。これも年度による有意差はありませんでした。2016年には、調査対象を受付などのスタッフにも広げたところ、その5%がMRSAを保菌しているという衝撃的な成績で、小動物病院内で院内感染が起こっている可能性を示しています。事実、病院環境からもMRSAが分離されています。