スーパーなどの店頭には旬の果物や野菜が所狭しと並んでおり、それを食べて季節を感じている方も多いと思います。しかし、最近では植物の生育方法の進歩があり、年間を通して食べる機会があることから、しばしば食中毒の発生も報告されています。野菜や果物は時に植物性自然毒を含むため、食べるに当たっては細心の注意を払う必要があるのです。

食中毒とはこれまで「食品中の自然毒や化学物質、細菌および細菌毒素を摂取することによる下痢などの急性疾患」を指していました。しかし、現在ではさらに広く、消化器性伝染病の一部の細菌(コレラ菌、赤痢菌、チフス・パラチフス菌)やウイルスも、食品を介して感染症を起こした場合は食中毒とされ、症状も消化器症状のみならず神経症状や風邪様症状をも含めています。したがって、食中毒の定義も曖昧になっているのです。

では伴侶動物であるイヌではどうでしょうか?獣医学では食中毒という概念は確立されていないのですが、イヌがヒトの食品を食べることにより、ヒトの食中毒に類した症状があらわれることも知られています。そこで今回は、ブドウによるイヌの食中毒の話です。

イヌのブドウによる食中毒の過去事例

イヌが絶対に食べていけない食品には、チョコレート、ネギ類、キシリトールとブドウが知られています。このうち、チョコレートに含まれるテオブロミンが中毒の原因とされています。ネギにはイヌの赤血球を破壊するアリルプロピルジスルホイドが含まれ、それはネギのエキスにも含まれているので注意が必要です。また、キシリトールはガムやお菓子に含まれている甘味料で、急激にイヌの血糖値を下げて、最悪の場合は死に至るともいわれています。では今回の本題であるブドウについて以下に解説したいと思います。

イヌのブドウによる食中毒は、2001年に米国のGwalney-Brantら(※1)がブドウやレーズンを大量に食べた後に急性腎不全を発症した症例を報告したことが最初になります。その後も報告が続き、ブドウやレーズンのイヌに対する危険性は世界的に認知されることになりました。日本でも2010年に3歳のマルチーズが種無しブドウ70gを食べた5時間後から嘔吐と乏尿(尿の排泄量が低下すること)を訴え、4日後に死亡した症例が報告されています(※2)。また、発症後の適切な治療により回復した症例も報告されています(※3)。

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