CKDの概要は

臨床を専門にする先生に対して釈迦に説法であることを承知して、まずはCKDの概要について紹介したいと思います。まず、ヒトのCKDについて見てみましょう。CDKは何らかの原因によって腎臓の機能が低下する病気で、腎機能が低下するか、あるいは尿中にタンパク質が排出されるという腎臓の異常が3カ月以上続いた場合に診断されます。原因は多岐にわたり、加齢や生活習慣と深く関わっています。一つの原因だけでなく複数の原因で腎機能が低下していることもあります。例えば糖尿病、高血圧、肥満、感染症などです。

一方、獣医学領域では、CKDは腎不全と同義語としても使われており、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS;International Renal Interest Society)が診断、病期分類と推奨される治療法について公表しています(http://www.iris-kidney.com/guidelines/recommendations.html)。病期分類には血漿クレアチン濃度とSDMA、UPC比、収縮期血圧が用いられています。この内、SDMAとは対称性ジメチルアルギニンのことで、アルギニンがメチル化されることで作られ、血清SDMA濃度と糸球体濾過量(GFR)が相関することから、新しい腎機能の指標として用いられています。UPC比(尿タンパク:クレアチニン比)は尿中のクレアチニン1g当たりのタンパク量で、本来なら1日当たりの尿タンパク量を調べる必要がありますが、随時尿で推定1日タンパク量を評価して測定できます。

CKDの原因を日本獣医生命科学大学付属動物医療センターの成績で見てみると、不明(タンパク尿もなし)(37.5%)と閉塞性腎症(尿管結石)(33.3%)が多く、急性腎不全からの移行(9.7%)と多発性嚢胞腎(5.6%)が続きました²⁾。このように猫の場合も様々な原因によりCKDになるようです。いろいろな原因で腎臓が障害され、急速に腎機能が低下する状態を急性腎障害(AKI;acute kidney injury)といい、猫では5~6歳ころにAKIに罹った後に腎機能が回復しないままに慢性腎不全、尿毒症となり亡くなることが多いとされています。治療法は病期ごとに異なるものの、基本的に食事の管理、脱水の管理、血圧の管理、タンパク尿の管理を行うために食事療法、輸液、薬物投与が行われています。ただし、いずれも対症療法であるため、原因療法が望まれていました。