■はじめに/読者の皆様へ
皆さん、初めまして。酪農学園大学の田村 豊と申します。
今年の22月まで獣医学群食品衛生学ユニットに所属し、獣医学生に対して獣医公衆衛生学の教育と、
動物と環境由来薬剤耐性菌の分子疫学に関する研究に従事していました。
今回、縁あってEDUWARD MEDIAにおいて獣医学関連の最新の話題について
「今週のヘッドライン 獣医学の今を読み解く」と題して
シリーズでコラムを書かせていただくことになりました。
大学の講義の最初に「今週のヘッドライン」として話していた、獣医学関連の話題を継承するものです。

毎週のように獣医学関連のニュースが引きも切らずに国内外から公表されています。
今回は読者が小動物医療関連の獣医師や動物看護師が中心ということで、
小動物医療関連の話題を中心に解説していきたいと思います。

また、獣医学全般の話題でも皆さんに知っておいて欲しいものも取り上げます。
世界で刻々と動いている獣医学の今を肌で感じていただければ幸いです。
是非とも興味を持っていただき、継続してお読みいただけることを期待しています。

酪農学園大学名誉教授 田村 豊

はじめに

欧州連合(EU)は 1993 年に発足したヨーロッパの政治や経済における国家共同体で 27 か国(2020 年 1 月にイギリスが離脱)で構成されています。動物用抗菌薬の使用規制についてもEU全体で取り組んでおり、従来から動物に対する厳しい規制措置を取っています。特に家畜の成長促進目的で使用される抗菌性飼料添加物については 2006 年にEUで全面禁止措置を取りました。

EUの規制措置は日本を含めて世界的に大きく影響しており、2017 年には米国で医療上重要な抗菌薬の成長促進目的での使用の中止に繋がりましたし、日本でもヒトへのリスクが少しでもあれば抗菌性飼料添加物の指定を取り消す指針が策定されています。この指針により、硫酸コリスチン、バージニアマイシン、リン酸タイロシン、テトラサイクリンの使用が禁止されています。今般、2022 年 1 月 28 日からEUが新たな動物用抗菌薬の使用規制措置を実施する予定で、まだ詳細は不明な点があるものの日本への大きな影響も懸念されています。そこで今回はこの規制措置の概要について現時点での情報を紹介したいと思います。