基礎疾患や併発疾患が疑われるときは、スクリーニング検査から一歩踏み込む思考を

このようにいろいろ問題点がみつかった時は、仲間になりそうなグループごとに分けてみると非常にわかりやすいかなと思います。
今回のケース3については2つのグループに分けて考えてみました。


まず左のグループと超音波検査で膵臓周囲の脂肪が若干高エコー源性であったことから、膵炎の可能性が考えられました。
しかし、経過が長いわりに重症度は高くないことを考えると、他の基礎疾患があるのではないかというマインドにたどり着きます。
そして右のグループを見ると「あの病気では?」とピンときました。

追加検査でACTH刺激試験を行い、同時に甲状腺ホルモン値を測ると、甲状腺ホルモン値は正常値でしたが、ACTH刺激試験では
コルチゾール値(Pre)が11.3µg /dL、コルチゾール値(Post)が37.7µg /dL
と非常に高い数値を示しました。
これらのことから、本症例は下垂体性クッシング症候群であるとの診断を下しました。

もしかしたら、腹部超音波検査で副腎が大きく腫れていなかったことを不思議に思う先生方もおられるかもしれません。しかし、副腎の大きさ、あるいは形態というのは下垂体性クッシング症候群の診断において必須ではありません。
これはあくまで下垂体性クッシング症候群と副腎腫瘍性のクッシング症候群を鑑別するための方法というところをよくご理解していただければと思います。

もう1つお伝えしたいのが、クッシング症候群は高血圧を引き起こす非常に重要でメジャーな疾患の1つであるということです。
最近の論文では、クッシング症候群のおよそ8割以上で高血圧が認められることが報告されており、180mmHg以上となるような非常に高い高血圧が約4割の症例で認められたという報告がありますので覚えておいていただけたら幸いです。

これまでの診断から、本症例で考えられる病態としては下垂体性クッシング症候群を基礎疾患とし、それが引き金となって膵炎が起こり、嘔吐を示しているのではないかというストーリーが考えられました。


スクリーニング検査の後の嘔吐に対する診断アプローチについて、さらに具体的にフローチャートで見ていきたいと思います。


甲状腺機能亢進症(猫)、クッシング症候群、アジソン病というのも鑑別疾患に入ってきますので、スクリーニング検査後は何か疑われる場合に必要に応じて内分泌検査や肝機能検査を行います。


では、スクリーニング検査から1歩進んだ検査はどのようなときに行わなければならないでしょうか?

それはスクリーニング検査で原因が特定できないときはもちろん、
特定できたとしても、基礎疾患や併発疾患が疑われるときです。
そのような場合に「スクリーニング検査から一歩進んだ検査」が必要になるのです。そのためにも、嘔吐以外の症状と検査所見に着目して診断しなければいけません。
CT検査やMRI検査や内視鏡検査を積極的に行わなくても診断にいきつく場合も多々ありますので、このあたりを先生方のマインドに入れて忘れないでいただければと思います。


【ケース3のポイント】
スクリーニング検査から1歩踏み込む思考を常にもつ