治療を補完する知識とは?

―今後、腫瘍科はどういう方向に発展していくと思われますか?
 より高度な治療へとシフトしていくのは間違いないでしょうね。放射線療法、化学療法に加えて免疫療法もベースに乗ってくるかもしれませんし、手術ももちろん高難度になる。高額な治療も増えていくでしょう。そうなったら、獣医師の側にもそれに見合う知識や技術、経験が求められていくと思います。腫瘍外科、腫瘍内科、放射線科、病理科、今まで以上に獣医師が勉強する幅が広がっていくと思います。
 ただ、個人的な印象となりますが、大学卒業後、雑誌や書籍だけで勉強している獣医師が増えていると感じます。雑誌や書籍にプラスして、学会に来ていろいろな情報を得ることは取捨選択の幅が広がるはずですし、ディスカッションも活発に行われている学会であればフラットな場で見聞を広めることにもなります。
もちろん、専門分野の底上げについては、われわれ専門医がしていかないといけないので、とも感じています。大学人として卒後教育の場についても考えなくてはといけないな、とも感じています。


―最後に、若手の先生方にメッセージをお願いいたします。
 道は1日にしてならず。すぐに専門分野を決めようとしないで、まずは病気と動物のことを全的によく学んでほしいと思います。ひとつの病気に気を取られて、命にかかわるような別の病気に気づかないような獣医師になってはいけません。自分はこれ専門だからこっちは知りません、ではなく、木を見て森を知るように、動物全体を見(診)てほしいですね。

 常識を疑うことも必要です。常に「ここに書いてあることは本当なのか」という気持ちをもち、最新の情報を仕入れるようにしましょう。世の中には間違った情報が溢れていますが、そういうものに対したとき、「あれ、変だぞ」と感じる感覚をもつことは、獣医師にとって非常に大切なことです。もちろん、簡単なことではないし、すぐには無理でしょう。まずは、「この病気」と決めたらそれに関する情報を読み漁り、目を肥えさせ、自分のなかで時間をかけてそうした感覚を養ってください。そうすると自分できちんと情報の取捨選択ができるようになります。

 実は私もまだまだ勉強不足で、いまだに毎日「え?こんなことあるの?」の連続です。だから面白い。私は、この「面白い」が獣医師の仕事を続けていくための原動力だと思っています。みなさんもぜひ、「いつもと違う」を見つけたら、「面白い」と感じるようになってください。


高木 哲

2000年  北海道大学獣医学部 卒業
2005年 北海道大学大学院獣医学研究科博士後期課程 修了 および学位取得
2004~2007年 北海道大学大学院獣医学研究科獣医外科学教室 助手
2007~2009年 北海道大学大学院獣医学研究科獣医外科学教室 助教
2009~2017年 北海道大学大学院獣医学研究科獣医外科学教室 准教授
2018年~     現職

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