各分野のトップランナーが、どのように学んできたのか。
そして、どのように学びを臨床に活かしているのか。

「明日の獣医療を創る」は、すべての臨床獣医師に捧げるインタビューシリーズ。
第8回は戸次 辰郎先生です。

※本インタビュー記事は、過去に取材した記事を再編集したものです。

自分の技術が反映されるのが整形外科

― 整形外科医を志した理由を教えてください。

戸次先生: 当院に勤務する前は、整形外科を苦手に感じていました。若いころはしっかり教えてくれる専門の先生がまわりにいなかったため、見様見真似でトライするがなかなか結果がでない…ということの繰り返し、つまり「不成功体験」ばかりが積もりに積もってしまい、それが苦手意識へとつながっていました。

本気で整形外科に取り組み始めたのは7年くらい前、当院へと移って少し経ってからです。それまでは主に軟部外科を担当していましたが、当院で二次診療を手掛けるようになると、軟部外科を担当する先生が多くなり、なかなか手術を担当できませんでした。

そんなとき、当院代表の川田 睦先生から「整形外科をやってみないか?」と誘われました。大好きな手術ができるなら、と川田先生に教わりながら担当してみたところ、意外にも私の性に合っていることに気が付いたんです。きちんとやれば確実によい結果が出るし、そうでないときは自分に技術が足りないというのが整形外科の醍醐味です。答えがわかりやすいところが、私の性格とマッチしていました。

― 約7年という短期間で、整形外科のスペシャリストになられたことに驚きます。戸次先生がどのように技術を修得してきたのかに、とても興味があります。

戸次先生: 私はまだまだ若輩者ですので、いくつか心掛けていることがあります。その一つが、“術前計画を大切にする”ということです。

例えば、骨折の場合は「いかに患部を安定化させるか」「その安定化をどう維持するか」の2点が重要になります。しかし、いくら私が安定化の維持を心掛けるようインフォームドしたとしても、動物の性格や飼い主の許容度によっては、私には手が届かない不確定要素が出てきます。この不確定要素をどれだけ排除できるか?どのように排除するか?を考えることも、術前計画に含まれると思っています。

「きちんとした手術を行い、合併症を一つ一つ減らすためには何が必要か」を考え、そこから逆算していくと、「まずはしっかりとした診断をくだす必要がある」「そのためにはきれいなX線画像が必要」「そうなると、身体検査をきちんと行う必要がある」といったように、基礎の内容へと遡っていきます。これは、川田先生から指導された「きれいな手術をしなさい」にもつながるものであり、この仕事をやればやるほど痛感しています。


また、技術向上のために“経過の追求”も大切にしています。もちろん、結果にこだわったうえでの話にはなりますが、手術の際には「ムダを省いて、いかに所要時間を縮めるか」「出血量を極力減らす方法は」「アクシデントにどう対応できたか」「チームの皆がどのように連携できたか」といったように、一連の経過にも強くこだわっています。自己満足の世界になるかもしれませんが、それらを項目分けして採点しつつ、「ここの部分がイマイチだった。次は絶対に繰り返さない」と必ず反省点をあげるようにしています。

あとは結果を人のせいにしないことですね。治療がうまくいかなかったとき、私は全部自分のせいにします。自分の手術がヘタだったから、術前計画が悪かったから、術後の看護方法の伝え方が悪かったから、今回はうまくいかなかったんだなと考える。すると同じ失敗が起きにくくなり、次の患者さんを救えるようになります。

それと、“天狗にならない”ことも重要かと思います。私は症例発表に積極的に取り組みたいと思っており、学会はその絶好の機会だと感じています。自分より先輩の先生から、「ここをもっとこうした方がよい」とご指摘いただくと、「足りない部分がわかった。もっと勉強が必要だ」という向上心がわいてきます。そして、自分のやり方というエゴに凝り固まった、いわゆる天狗になることも防げるわけです。