各分野のトップランナーが、どのように学んできたのか。
そして、どのように学びを臨床に活かしているのか。

「明日の獣医療を創る」は、すべての臨床獣医師に捧げるインタビューシリーズ。
第6回は髙野 裕史先生です。

※本インタビュー記事は、過去に取材した記事を再編集したものです。

日本の獣医循環器診療の現状

― 循環器科、特に心臓外科において日本は世界の最先端を走っているという印象があります。日本における循環器科の二次診療の現状を教えてください。

髙野先生: 心臓外科、特に僧帽弁閉鎖不全症に対する外科治療に関しては、多くの先生方の多大な努力と長い試行錯誤を経たうえで、茶屋ヶ坂動物病院の金本 勇先生や私の勤務するJASMINEどうぶつ循環器病センターの上地正実先生らによって、動物病院でルーチンに行っていける手術として形になったものと理解しています。この分野において一歩先んじている日本、そして施設で、チームの一員として働けていることを非常に幸運に思っています。
当センターでの心臓外科の多くは僧帽弁の症例となり、現在のところ、その成功率(退院率)は93~94%程度となります。ヒトでの死亡率と比べるとまだリスクが高いといえますが、チーム全員で経験とデータを積み上げながら、日々、手術や術後管理を改善していけるように切磋琢磨しています。

― 術後管理もかなり重要と推察しますが

髙野先生: そうですね、術後の経過は結果をかなり左右しますね。“この傾向がでてくるとかなりヤバい”とか。ただ当院は症例に恵まれているため、術後傾向をパターン化して対応策を練る、ということができるようになってきました。頭の使い方では色々な観点でデータをまとめることが出来るので、臨床研究を積み重ねていける現状にもあると思います。

― シビアな現場に身を置かれていますが、そもそも循環器科を志したのはどのような理由からでしょうか。

髙野先生: 大学時代に研究室を選ぶ際、「せっかくなら一番忙しい研究室に入ろう」と外科学研究室を選びました。そして、心臓病や腎臓病を担当する外科学第一研究室に決めたのは、心臓など体の内側へとアプローチする領域は理路整然として、そのメカニズムを学んでいくことが楽しそうに思えたからです。

その後、当時の麻布大学の教授であった若尾義人先生や博士課程のメンターにもなっていただいた藤井洋子先生にご指導いただくうちに、自然と循環器科への興味が増していき、教育熱心な2人のようになりたい、と純粋に思うようになりました。この麻布大学で学んだ8年間が、今の自分をつくっていると感じます。

しかし、2人のように大学病院に在籍しながら、将来は臨床・研究・教育の3つを軸に、循環器科へとかかわっていきたいと思うようになったものの、自分のやりたいことや専門領域をいかしつつ大学病院に残ることはものすごく難しく、その道に進める人間は限られているように感じました。卒業後は、自身の夢を実現できる場に辿り着けるかと、不安な日々もありました(今も不安がまったくないわけではないですが……)。