「血」「津液」とは

それでは「血」「津液」とは何でしょうか。
「血」は血液とほぼイコールですが、全身に栄養を行きわたらせるだけでなく、精神を落ち着かせたり意識をはっきりさせたりする働きもあります。
「津液」は「血」以外の体内の水分の総称で、汗や涙といったサラサラした液体を「津」、関節液や髄液などの粘稠度の高い液体を「液」と言います。
「気・血・津液」はそれぞれ、お互いを生成したり、働きを助けたりと密接に関係していますが、そのためどこかに不調が出ると、互いにその影響も受けやすいのです。


「気・血・津液」は何からできているのかというと、「水穀の精微」と呼ばれる飲食物の栄養素と、「自然の清気」と呼ばれる肺で吸収した空気からつくられるのです。生まれるときに両親からもらってきた「先天の気」もありますが、これは徐々に減ってきてしまうので、生きていくために自分でつくっていく必要がありますね。このことからも、質の良い食べ物と綺麗な空気が、生命の健康には重要であるということがわかります。


日常の診療の中で出会う例をみてみましょう。
例えば、「元気がないようだ」「食欲がないようだ」という主訴で来院した患者さんがいたとします。診察や検査をしても特別な異常が見られない場合、西洋医学的には「異常」とはみなされないかもしれませんが、中医学的にみると、もしかしたら「気」の不足が進んだ「気虚(ききょ)」という状態かもしれません。
例えば気虚は、気の生成不足のほか、慢性の病気や、外傷、過労、過剰な交配などによっても起こりますが、特に高齢の動物では、気の不足は程度の差はあれ多くの患者さんにみられます。気が不足する要因が何かなかったかを問診でよく確認する必要がありますね。
この場合、気を補う作用のある経穴(ツボ)を鍼(はり)で刺激したり、お灸をすえたりすることで症状の改善を図ることができます。


「血」「津液」に関しても同様にそれぞれの不調に対して適切な手技を行います。
今回出てきた「気」も含め、数値化はできないものではありますが、存在を意識して向き合うと西洋医学的には診断に至らないものも、治療の手がかりが得られることがありますよ。


いかがでしょうか。
「気」と少しお近づきになれたような気がしていただけたでしょうか?
それでは次回をお楽しみに!皆さまお元気でお過ごしください!


青木志織 Shiori Aoki

ウィルどうぶつクリニック

大学在学時より中医学を志す
日本獣医中医薬学院卒業
1 級獣医中医師/獣医推拿整体師
現在、中医学気功も勉強中

こちらの記事もおすすめ