重要なのはテクニックではなく解剖学!

―運動器超音波検査には、たくさんのメリットがあることがわかりました。では、本書はどのような点をコンセプトとして作成されたのでしょうか?
 超音波検査機器さえあれば、誰でも簡単に運動器を描出することができます。
 テクニックは必要ありません。必要なのは解剖学の知識です。
 運動器超音波検査を行う上で最大の壁となるのは、得られた画像が“何を映し出しているのか”を読み取ることです。そのためには、深い解剖の知識が必要不可欠です。解剖学を学ぶには、ひたすら教科書を読むしかありません。しかし、解剖学の教科書に掲載されているイラストは、当たり前ですが、全て平面のイラストです。一方、運動器超音波検査の画像は全て断層像です。プローブを当てれば画像が得られるので、当て方は無限です。つまり、解剖学の教科書の知識だけでは不十分で、頭の中でこれらの平面のイラストをあらゆる角度から断層像に再構築できるようにトレーニングすることが必要なのです。
 
 私はこのトレーニングを10年以上続けています(笑)。
 そこで本書では、ある種の修行とも言えるトレーニングをせずとも、各部位における運動器の基本的な画像が理解できることをコンセプトに作成しました。各項目の冒頭では基本的な解剖学の知識を、平面のイラストとしておさらいし(Fig. 1)、プローブの当て方と超音波画像およびその解説をセットにして掲載しています。そして、最も力を入れたのが、超音波画像と全く同じ解剖断面を作成し、その写真を超音波画像と一緒に掲載していることです(Fig. 2)


―本書では、先生がこの分野で多大な教えを受けたという皆川洋至先生、松崎正史氏にもコラムを執筆いただいていますね。
 秋田県の城東整形外科診療部長であり、国内外から講演依頼が絶 えない皆川洋至先生。そして、豊富な超音波診断装置の知識で皆川先生をサポートされている、ソニックジャパン代表取締役の松崎正史氏には、日頃からさまざまなご指導をいただいております。お二人はヒト医療の運動器超音波検査を普及・発展させた立役者であり、本書執筆に当たっても大きなお力添えを賜りました。

 本書では、皆川先生にはヒトと動物の違いやヒトのエコー検査の最先端について、松崎氏には検査機器のメカニズムや原理、アーチファクトについて非常に面白くわかりやすく執筆いただいています(fig. 4,5)。


―本書には理解を深めるための動画がついていますが、その活用方法を教えてください。
 運動器超音波検査は運動器が動いているところを観察してこそ意味があるのですが、書籍ではどうしても静止画のみになってしまいます。静止画を理解できなければ、動画は理解できないので、まずはしっかりと本書を眺めてもらいたいのですが、実際の検査では運動器の動きを見ることに多くの時間を割いています。動画では、プローブの持ち方から始まり、どこにどのようにプローブを当て、どのように関節を動かすのか、そのとき超音波画像ではどう見えるのかを紹介しています(fig. 6,7)。本書を片手に動画をご覧いただくと、理解がさらに深まると思います。