研究の魅力を再発見し、臨床との両立へ

―先生は大学院卒業後、博士研究員としてミネソタ大学に所属されていた経歴がありますが、そちらで先生が影響を受けた方もいらっしゃいますか。
 一番に思い浮かぶのは、Jaime F. Modiano先生です。ミネソタ大学のラボの当時の研究責任者で、腫瘍生物学の分野ではかなり権威のある方です。この先生のもとで研究できたことが、私の中で大きな財産になっているのを感じます。Modiano先生は、「部下の失敗は全て上司の責任。業績は、自分だけでなくチームのサポートで獲得したもの」という考え方を貫いている方でした。例えば、渡米したばかりの頃の私は英語でのコミュニケーションが不得手で、チームでの仕事の中でちょっとした失敗も多かったのですが、Modiano先生から怒られたことは一度もなく、むしろ「きちんとサポートしてあげられなかった自分の責任だ」と言って私に謝られるほど。科学者としてはもちろん人としてもすごく尊敬できる方で、こんな人になりたいと憧れました。

 Modiano先生に出会ったことで研究の面白さを再認識させてもらい、「大学での研究と臨床を両立できる職に就きたい」と考え始めました。その後、大学の教員になってみますと、まず自分が教え子たちよりも進んでいないといけないですから、教育も研究のモチベーションになると感じていて。やはり、大学に所属している教員として、研究、臨床、教育の3つを常に最高水準でやっていかなければならないと考えています。