「客観的に振り返る」という学習法

―先生の「学びの方法」についてお聞きしたいと思います。まず勤務医時代、臨床現場ではどのような方法で勉強されていましたか?
 雑誌とセミナーがメインでした。「SA Medicine」「SURGEON」といった雑誌は、常に手の届く場所に置いてあり、疑わしい疾患の患者が来院したときの確認用として読んでいました。今のように、インターネットを使ってすぐに情報へとアクセスできる時代ではなかったので、雑誌は診療のサマリーを掴むためのツールとして、とても役に立っていました。一方で、当時は教科書を読むことは少なかったように思います。


―一般臨床は多忙なため、教科書を読み直す時間がなかなかとれない先生も多いと聞きます。
 今は、時間をみつけて教科書を開いて見直すようにしていますが、勤務医時代は勉強する分野も多く、そういった時間をあまりとりませんでした。でも、教科書には「解剖学」や「生理学」など、疾患へのアプローチに必要な基本事項が載っているので、“どうして?”“なぜ?”といった本質から理解するのにとても役立ちます。
 
 病気は身体に起こるものなので、身体のことを細部まで知ることは必須だと思います。「なぜ、そうなっているんだろう?」がわかれば、経験のない症例や未知の疾患に出会ったときにイチから考え直すことができます。教科書に書いてある基本的な部分が重要であり、それが面白いと思いながら読めるようになりました。「教科書を見直して振り返る」といったことも、知見や知識を増やすうえで、そして対応力を付けるうえで重要なように思います。


―「診療を振り返る」ために、教科書を熟読する以外に行っていることはありますか?
 私は手術後にイラスト(模式図)を描いて、手術記録を残すようにしています。ただし、残すこと自体が目的ではなく、自分の手術内容を冷静に客観視しながら、一度整理することが目的です。文章で残す先生もいらっしゃると思いますが、私は活字が苦手なので、ビジュアルで残すようにしています(苦笑)。