こんにちは。VETS CHANNEL事務局です。
10月特集【整形外科】では、一般的な手術だけでなく、ややマイナーな疾患の手術動画も公開されました。
例えば中手骨の骨折。特に小型犬ではとても細くて、整形外科が得意な先生でないと内固定の決断は難しいかもしれません。
そこで今回の注目トピックスは「中手骨/中足骨骨折の治療選択」!注目動画と最新の論文情報をご紹介します!

注目動画と論文情報をご紹介!

動画でupgrade!
整形外科コンテンツも盛り沢山のVETS CHANNELでは、観血的整復の手術動画を公開中です!
トイ犬種に並ぶ骨の細い犬種における、内固定と術後補助的な外固定をご覧いただけます。


◆中手骨骨折整復術
講師:川合 智行先生(横浜山手犬猫医療センター)

https://e-lephant.tv/vets-ch/vetspay/1004431/
https://e-lephant.tv/vets-ch/vetspay/1004432/

症例はミニチュア・ピンシャー, 10カ月齢, 避妊雌, 2.2kg、落下により左前肢第3、4中手骨の骨折が認められたため、ピンニングによる整復術を実施しました。
術前の評価や手術計画の立て方、プレーティング可否の見極めなど、細かな解説とともにぜひご確認ください。


論文情報でupgrade!
小型犬においても手術適応になる、とはいえ自信をもって実施するには十分な技術が必要です。
では実際に、観血的な整復はどれほど必要なのか?を考える、最新論文情報をご紹介します。

犬および猫の中手骨/中足骨骨折における観血的または非観血的安定化の術後転帰の比較
背景:
中手骨/中足骨骨折の治療選択肢には、保存療法と外科的治療がある。本研究の目的は、観血的治療と非観血的治療の間で治癒率と合併症率に有意差があるかどうかを判断することである。
中手骨/中足骨骨折の犬と猫の医療記録を、完全な追跡調査とともに遡及的にレビューした。患者は観血的に安定化した群と非観血的に安定化した群の2群に割り当てられた。軽度および重度の合併症を記録し、両群を比較した。骨折の治癒は良好、遅延、非癒合に分類し、統計的に比較した。
結果:
63例(犬35例、猫28例)を対象とした。31例は観血的、32例は非観血的に治療した。骨折治癒に関しては、治癒遅延/癒合不全の割合が非観血的治療群で有意に高かった(12/32例 vs 2/31例)。術後合併症に関しては、観血的治療群では合併症の発症が優位に少なかった(12/31例 vs 3/32例)。軽度の合併症の割合は、非観血的治療群で有意に高かった(27/32例vs 12/31例)。しかし、統計学的に有意ではないものの、重度の合併症の数は観血的治療群の方が多かった(7/31例 vs 2/32例)。骨折のアライメント不良は、非観血的に安定化させた患者で有意に多かった(11/32例 vs 2/31例)。
結論:
結果から、観血的に骨折を安定させた場合、より良い治癒、骨折アライメント矯正およびより低い割合での合併症率が見出された。しかし骨折の形態や軟部組織の関与、患者の性格およびクライアントの状況などの他の因子も、安定化技術の決定において考慮する必要がある。

Comparison of post-operative outcomes after open or closed surgical techniques to stabilize metacarpal and metatarsal fractures in dogs and cats.
Rosselló, G.C., Carmel, J., Pead, M., Lacosta, V.V., Lafuente, P.
BMC Vet. Res.
, 2022 Aug 4; 18(1): 300.
PMID: 35927668.



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https://media.eduone.jp/list/106/123/


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