肝胆道系をはじめ、消化器疾患のエキスパートとして知られる福島建次郎先生。福島先生は 2022 年 7 月、米国でのレジデントプログラムを修了し、厳しい選考を突破して米国獣医内科学専門医の資格を取得されました。留学先の米国で、福島先生はどのような学びを得られたのでしょうか。そして、今後は日本の獣医療に何を残そうと考えておられるのでしょうか。獣医師を志してから今日までの道のりに沿って、福島先生の学びのポイントと今後の展望までを詳しく伺いました。

鹿児大から東大へ。獣医内科学との出会い
―― まず、先生が獣医師になろうと思われたきっかけから、お聞かせください。
母に聞くところ、小学校 3 年生あたりの文集には、「将来は獣医さんになりたい」と書いていたようです。でも、私自身はあまり覚えていないんですよ(笑)。思い出せるのは、小学校低学年の頃、通学路で捨て犬を拾ってきた時のこと。父をなんとか説得して、譲渡先が見つかるまで預かれるようになったものの、肝心の子犬の世話は母と姉に任せきりで……。母と姉に「責任感がない」と厳しく叱られてしまったのをよく覚えています。
―― 高校卒業後は鹿児島大学の農学部獣医学科に進まれました。やはり、獣医師になりたいという思いが奥底にあったのでしょうか。
うーん、どうでしょう(笑)。生物学が好きだったのもありますし、海外ドラマの「ER緊急救命室」を見て、かっこいいと思ったのも、医療系を志したきっかけだったのかもしれません。
―― 鹿児島大学では、どの研究室に?
内科学研究室で学び、分子細胞生物学的なアプローチを用いた腫瘍関連の研究に取り組んでいました。日本獣医内科学アカデミーなどで研究発表の機会もいただき、その時に出会った東京大学の研修医の先生の勧めもあって、卒業後は東京大学の研修医の道を選ぶことに。また、研究室の教員だった遠藤泰之先生は東京大学の大学院生や海外での研究員の経歴、先輩だった高橋 雅先生は東京大学の研修医の経歴をもつ方々でした。先生方に「広い世界に出て学ぶべきだ」とアドバイスをいただいたのも、進路選択に大きく影響していると思います。
―― 東京大学では研修医として 2 年、教務補佐員・臨床教員として合計 9 年と、かなり長い時間を過ごされたかと思います。振り返っていかがですか?
研修医時代は、同期に中村篤史先生と浅川 翠先生、大学院に金本英之先生がおられ、先生方のバイタリティにすごく刺激を受けていました。中村先生とは特に仲が良くて。学び合い、時におふざけに興じ、笑いが絶えない日々だったのをよく思い出します。そんな 2 年の研修医期間が終わりを迎える頃、指導教官であった辻本 元先生に就職先の相談に行くと、「内科の教務補佐のポストにちょうど空きが出たから、大学に残らないか」とお声がけいただいて。分子生物学的な研究を並行して進められることに特に魅力を感じ、大学に残ることを決めました。教務補佐員時代にはリンパ球クローナリティの研究や、好中球の活性酸素産性能をフローサイトメトリーで測定するような研究をしていました。その後、第 2 内科(消化器内科)に異動。そちらでは消化器、肝胆道系や免疫介在性疾患の臨床研究や教育が中心だったのですが、大野耕一先生、中島 亘先生という優秀な先生方にご指導いただいたこともあって、すごく面白い分野だと感じていました。