書籍『皮膚科の処方ノート2023』が5月15日に発刊されました。本書の第1部では、犬アトピー性皮膚炎の診断ガイドラインに基づいた除外診断ステップを活用することで、一次診療で遭遇する痒みのある疾患のおよそ90%を診断・除外(コントロール)することが可能になる、と書かれています。痒みが続く犬の診断治療の基本をマスターするだけで、皮膚科を受診する多くの症例に対していつも同じアプローチでコントロールできるようになり、その症状・経過から逸脱する症例では、他の皮膚疾患であることにも気付くこともできるようになると大隅先生はいいます。本書の第2部では、それ以外の疾患である脱毛症や外耳炎・中耳炎についても詳しく書かれています。
全国の臨床の先生方に向けて、本書の特徴や読みどころ、使いどころ、筆者の想いをお伝えしたいと考え、執筆者の大隅先生にお話しを伺いました。
〈聞き手:エデュワードプレス社長 太田宗雪〉

「私はこんな気持ちで治療している」 この想いが、皮膚病を治す大事な力だと思っています

──本書は2015年から2019年まで小動物皮膚科専門誌 『Small Animal Dermatology』に連載された「皮膚科の処方ノート」をベースとして書籍にまとめたものになりますが、大隅先生がこの連載を始めるきっかけと、どのような先生方を対象に書かれたものなのか、お聞かせください。
当時の編集の方から「大隅先生流の治療法」の記事を書いてみませんか、と言われたのがきっかけです。その時に思いついたのが「膿皮症」でした。当時の2014年は、抗菌薬を飲む治療が当たり前でしたが、海外の学会などで最新情報を仕入れた私は、薬は飲まずに消毒とシャンプーだけで治療すると、恐ろしいほど治ることを感じていました。現在では一般的になってきましたが、9年前ですから当時はまさに「これが私の治療法」だったと思います。
『Small Animal Dermatology』は一般の一次診療の先生方が読んでいる雑誌だと思っていたので、私は常にホームドクターである一次診療の先生に向けて書いています。私自身、一次診療医でしたし、勤めている病院の先生も同様にやって、うまくいっているのを知っていましたから、こういうやり方をすれば迷わずにすむと伝えたいと思いました。皮膚治療がうまくいけば、皮膚病以外の病気にもしっかりと目が行く余裕ができます。そのために、ジェネラリストの先生たちにわかりやすいようにと意識して原稿を書きました。

――『皮膚科の処方ノート』というタイトルには、大隅先生が行ってきた皮膚科診療や研究のどのような経験や実績、想いが詰まっているのでしょうか?
タイトルについては連載時、「筆者の処方ノート」、「私の処方ノート」、「処方メモ」など候補を出して当時の担当者と決めました。そのうち自然と、「これこそが、今回お伝えしたい筆者の処方ノートである」という決まり文句を入れていました。本書はあくまで私のやり方をまとめた我流の「現場で使えるテクニック」ですから、内容は偏った情報もあるかもしれません。教科書ではなく、現場の獣医師のガイドブックとして使っていただければと思っています。