犬用の人工血液の開発

犬用の人工血液の合成について紹介します。
まず、提供される犬血清に限りがあることから、遺伝子組換え技術を用いて犬血清アルブミンを生産し、X線を照射することで結晶の立体構造を解析する「X線結晶構造解析」によって立体構造を明らかにしました5, 6)。このX線結晶構造解析では、JAXAが国際宇宙ステーションの実験で培った「高品質タンパク質結晶精製技術」が適用されました。

さらに、牛赤血球から酸素輸送蛋白質であるヘモグロビンを精製して、遺伝子組換え犬血清アルブミンで包み込んだ形の「ヘモグロビン-組換え犬血清アルブミンクラスター(ヘモアクト-C™)」を合成し、それが犬用の人工酸素運搬体(赤血球代替物)として機能することを実証しました(図 1)。


図1.牛赤血球から精製したヘモグロビンを遺伝子組換え犬血清アルブミンで包み込んだ構造のヘモアクト‐CTM 6)

また、研究グループは同様の方法を用いて、猫用の人工血液(ヘモアクト‐FTM)の合成にも成功しています7)。なお、動物用の人工血液については小松教授が解説している動画が公開されているので、ご覧いただれければ理解が深まると思います8)