こんにちは。VETS CHANNEL事務局です。
本日は、近年獣医療においても注目されつつあるIVRに関連したこちらの論文をご紹介いたします。
IVRの総論を解説したこちらの動画とあわせてご活用ください。
◇IVRの世界に飛び込もう!第1回 総論
金井 詠一先生(麻布大学 小動物外科学研究室)
https://e-lephant.tv/vets-ch/vetspay/1004105/

ポリエチレングリコールマイクロスフィアを用いた前立腺動脈塞栓術:犬の自然発症前立腺肥大症モデルでの評価
背景:
前立腺動脈塞栓術(PAE)は、症候性前立腺肥大症(BPH)患者の下部尿路症状を緩和する低侵襲的な治療法である。様々な塞栓物質が動物モデルで検証され、その後、ヒトの患者にも使用されている。本研究の目的は、イヌの自然発症の前立腺肥大症モデルにおいて、ポリエチレングリコールマイクロスフィアを用いたPAEの技術の実現可能性、有効性、安全性を評価することであった。
結果:
5頭の成体雄ビーグル犬(4.78±1.11 歳)が、経直腸超音波検査により自然発症のBPH(前立腺容量>18 ml)と診断され、ポリエチレングリコールマイクロスフィア(400±75 μm)を用いたPAEを受けた。PAEはすべての犬で正常に行われた。PAE後1カ月間のフォローアップ期間中に、すべての犬に処置に関連した潜在的な合併症がないか検査した。その結果、重大な合併症は認められなかった。処置1カ月後に血管造影を行ったところ、全例で前立腺動脈または主枝の再疎通が確認された。磁気共鳴画像(MRI)評価は、ベースラインデータとしてPAE直前に行い、さらにPAE後1週間、2週間、1カ月でも実施された。MRI検査では、各犬で前立腺が虚血性壊死により大幅に縮小したことが確認された。処置から2週間後および1カ月後の平均前立腺容積は、ベースラインデータと比較して、それぞれ19.95±1.89 mLから13.14±2.33 mLおよび 9.35±2.69 mLへと、有意に減少した(p<0.001)。病理組織学的検査は1カ月のフォローアップ血管造影後に行われ、びまん性腺萎縮および間質の線維化を伴う治療反応が確認された。
結論:
本研究の結果より、ポリエチレングリコールマイクロスフィアを用いたPAEは、局所虚血と二次的な腺萎縮により前立腺の著しい収縮を引き起こす可能性のある、安全かつ実行可能な手技であることを支持するものであった。標的動脈の早期再疎通は、研究と臨床の両方において、さらなる取り組みが必要である。
Prostatic artery embolization with polyethylene glycol microspheres: evaluation in a canine spontaneous benign prostatic hyperplasia model.
Lucas Cava V, Sánchez Margallo FM, Báez Díaz C, et al.
CVIR Endovasc., 2020; 3(1): 44.
PMID: 32886265.
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