生産現場でのAW

AWの考え方は、動愛法の基本原則を定めた第二条第 2 項に、「何人も、動物を取り扱う場合には、その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない。」として規定されています。農林水産省はOIEのAWに関する勧告が順次採択されていることを踏まえて、2020 年に「AWに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について」2)を発出しています。その中で、AWの定義や 5 つの自由の確保、家畜の飼養管理、輸送および殺処分に携わる者の責務が記され、AWに配慮した飼養管理の普及・定着を図っています。

また、AWに配慮した畜種ごとの飼養管理方法についても、畜産技術協会がOIEコードに沿った飼養管理指針や輸送に関する指針、農場内での殺処分に関する指針も作成し、その普及を図っています4)。さらに、畜産技術協会は、これらの内容を現場で取り組みやすくするために写真などを添えて分かりやすくしたパンフレットも作成し、普及・啓発に努めているところです。

生産現場におけるこれらの飼養管理指針などの実施状況については、各畜種において、アンケート上は指針に沿った対応がほぼできていることになっています5)。しかし、無麻酔下での徐角や去勢といった外科的な処置や、乳牛の繋ぎ飼い、豚のストール飼い、産卵鶏のケージ飼いにおける運動制限など、完全に実施できていない項目も多いと思います。さらに 2013 年に公表された日本のと畜場の繋留所における家畜の飲用水設備の設置状況6)をみると、科学的な根拠は不明ながら、多くのと畜場で給水設備そのものがないか、あっても給水していないことが明らかにされています(図2)。特に豚において牛より顕著であるようです。


図2.繋留所における給水状況の全国分布図(〇あり ●なし)6)


日本では効率性や経済性などがAWより優先しているようで、先に述べたAPIの国際比較でEランクであることも頷ける話かと思います。AWに関するソフト面での体裁は整えたものの、内容や実践において、まだまだ取り組むべき課題が多いのが現状のようです。ただし、米国やEUへの牛肉などの輸出にあたって、AWの要件が設定されており、その遵守が必要なことから、現在のような対応では遅く、さらなる活動の進展が望まれるところです。