自由闊達な意見交換でチーム医療の実現へ

―― 富安先生は共同研究の案件も非常に多いですよね。

研究者としては常に、自分たちのチームが何らかのエビデンスを作る側でなければいけないということを意識しているのですが、最近は獣医学領域においてもそれぞれの研究が非常に奥深くなっていると思うんです。一人の研究者だけの力で興味深い研究をするのが難しくなった反面、さまざまな専門知識や経験を持った人が集まって優れた共同研究成果を生み出せる、すごくよい時代になってきたのではないかと思います。

―― 海外の先生方との共同研究案件も増えておられます。

研究の場合は自分の論文をみてくれた方からお声がけいただいたり、また、「The Veterinary Journal」(ELSEVIER)という老舗学術雑誌のエディターを私が務めている関係から、私の名前を知っていただけるケースもあると思います。一方、臨床方面での研究の海外での知名度はまだまだ……。私は研究者ですが、一方で血液内科の臨床医としての道も極めていきたいとの思いもありまして。しかし、血液内科の分野だけでも学ぶことは山ほどあり、肝臓や膵臓など他分野の疾患の最先端というのはどうなっているのか、もう、全然追いつかないわけですよ。その点、当院で働いている同僚には本当に素晴らしい臨床獣医師の先生がおられるので、その方々に教わっている部分がかなり大きいと思います。

―― 東京大学の内科系診療科では昔から、活発な症例検討会を開催されているそうですね。

はい。担当医の考え方や最新の診療方法を知り、情報をアップデートできるという点で非常にありがたい検討会です。基本的には研修医のための会という位置づけなのですが、教員のためにも非常に有用ですし、病院全体の診療を高い水準で保つ役割を果たしていると思います。一つの症例に対して多数の先生がさまざまな角度からの見方を話し合うことで、チーム医療に近い形が実現できるのではないでしょうか。


―― 東京大学の症例検討会は、上下関係にこだわらず、シビアな意見交換がされるとお聞きしていますが…。

はい。年下の教員でも、「なぜこの治療を選んだんですか?」、「こうしたほうがよかったのでは?」と、遠慮なく質問してくれますし、気づかされる部分もあったりします。私自身も過去、辻本先生の症例に対して「なぜこの治療を選んだのですか?」と突っ込んだ質問をしたことがありますが、それでも関係性は全く悪くなりません。こうした自由な意見交換ができる気風は、大野耕一先生をはじめ、先輩方が守り続けてくださった伝統で、非常にありがたいと思っています。

―― 最後に、後進の学生や一次診療の獣医師の皆さんに向けてのメッセージをお願いします。

研究室の学生にいつも話しているのは、「臨床の現場に必ず立ちなさい」ということです。今の時代は業績が求められがちなので、「なるべく多くの時間を研究にあてたい」という学生が多いのですが、やはり、研究に向かうモチベーションは、さきほどもお話しした通り、臨床の現場から生まれるものだと私は思うんです。
 また、一次診療の先生方に対しては、我々のような二次診療施設とより緊密な連携をとれるような取り組みができればよいなと考えています。一次診療、二次診療が果たすべき役割をお互い尊重し合いながら、より密な関係性を築いていきたいと考えておりますので、今後も、どうぞよろしくお願いいたします。