研究の魅力を再発見し、臨床との両立へ

―― 先生は大学院卒業後、博士研究員としてミネソタ大学に所属されていた経歴がありますが、そちらで先生が影響を受けた方もいらっしゃいますか。

一番に思い浮かぶのは、Jaime F. Modiano先生です。ミネソタ大学のラボの当時の研究責任者で、腫瘍生物学の分野ではかなり権威のある方です。この先生のもとで研究できたことが、私の中で大きな財産になっているのを感じます。
Modiano先生は、「部下の失敗は全て上司の責任。業績は、自分だけでなくチームのサポートで獲得したもの」という考え方を貫いている方でした。例えば、渡米したばかりの頃の私は英語でのコミュニケーションが不得手で、チームでの仕事の中でちょっとした失敗も多かったのですが、Modiano先生から怒られたことは一度もなく、むしろ「きちんとサポートしてあげられなかった自分の責任だ」と言って私に謝られるほど。しかも、ご自分の研究発表の際に、「このパートは彼が頑張って成果を出してくれた」などと、チームの人間を立ててくださるんです。科学者としてはもちろん人としてもすごく尊敬できる方で、こんな人になりたいと憧れました。

―― 海外は日本とは研究環境も少し違いますよね。

そうですね。研究者から掃除・メンテナンスの方に至るまで、レスポンシビリティが非常にはっきりしていて、それぞれが役割を 100%、120%果たすことで上手くまわっていくという考え方が浸透しています。私の場合はModiano先生から「研究費獲得、研究の遂行、論文発表に集中していけばよい」と言われていて、そうした文化の差は目から鱗でもありました。


―― その後、日本に戻って東京大学附属動物医療センターの特任研究員、そして獣医内科学教室の准教授に就かれたわけですよね。

はい。ミネソタ大学へ行く前は臨床医への憧れが強く、アメリカの専門医資格を取得することも考えていたのですが、Modiano先生に出会ったことで研究の面白さを再認識させてもらい、「大学での研究と臨床を両立できる職に就きたい」と考え始めました。その後、大学の教員になってみますと、「教育」という部分も重要になってきますよね。やはり、人に教えるにはまず自分が教え子たちよりも進んでいないといけないと思いますから、そこも研究のモチベーションになると感じています。やはり、大学に所属している教員として、研究、臨床、教育の 3 つの活動を常に最高水準でやっていかなければならないと考えています。